デュガ・ピィ
試飲日 2004年07月23日
場 所    神奈川県某所 
照 明 白熱灯?
種 類 フランス ブルゴーニュ地方赤ワイン
生産者 Bernard DUGAT-PY (Gevrey-Chambertin)
Vintage 2002
テーマ デュガ・ピィ伝説
ワイン Bourgogne

<ブルゴーニュ>
 
クーラーの効いた部屋で室温にて抜栓。すぐにINAOグラスに注いでみる。色合いはエッジの大部分をムラサキ色が占めるかなり濃い目のルビー色。香りは閉じていて、ラズベリーやブルーベリーの香りが他のニュアンスを覆いつくすように香っている。口に含めば、端整な辛口で、媚びない果実味が印象的。まだ全然硬く、これでは美味しいところを知らずに飲み干しそうな感じなので、急きょデカンタに移し、やや温度も下げたくなったのでデカンタごと冷蔵庫に入れて少し待ってみる。

 小30分ほど待ったところで、大き目のブルゴーニュグラスに注いで、再度挑戦。少し冷たさを感じる程度の温度からスタートし、自然の温度上昇に任せてゆっくりと楽しむことにした。ベリー系の果実味果実香がやはり体勢を支配し、媚びない甘さが僅かに感じられつつも、あまりうまみ成分は乗ってこず、余韻も思ったほどには長くはなかった。ワインの持ちうるポテンシャルの大きさは、閉じた殻の中に感じられるものの、それは結局開花することなく、最後までその本領は見せることはなかった。

 2002年というブルゴーニュにとっての偉大な年のデュガ・ピィのワインを飲むとき、否応なく伝説化された評価と市場原理を反映した高値を意識し、巨大化した期待感は、その行き場を頂点めがけて登り行くものである。しかし、過剰な期待は、あっさりと裏切られ、期待が大きかった分だけ、その落ち込み具合も並大抵ではないようだ。

 例えるならば、恐竜の卵を最新技術を駆使して孵化させようと思いつつ、結局は何も起こらなかったかのような、そんな肩透かし感。または飛び立てなかったスチーム城(注)ともいうような、そんな感じがしてならない。

 今回のブルゴーニュはデュガ・ピィの最もスタンダードなワインであり、ジュブレ・シャンベルタンの区画外の平地(国道74号線の東側)に植わるピノ・ノワールを醸造して造られているが、このワインをしてシャンベルタンを想像するのは不可能に近い作業だろう。(同じブルゴーニュでも、キュベ・アリナールはジュブレ・シャンベルタンの区画内に植わる樹齢30年未満の若木から造られる格下げバージョン)。デュガ・ピィ自身が全ての栽培・醸造に関与しつつも、畑のポテンシャルも違い、一部トラクターでの耕作を導入し、新樽比率も違うことから、あくまでもACブルゴーニュそのものとして評価する必要があるだろう。そしてそのとき、異常な高値と暗黙の期待感が、予想以上にこのワインに重くのしかかるから、ある意味かわいそうではある。

 すべてのデュガ・ピィが美味しいとは限らない。ひとつの警鐘を鳴らしてもらったような、そんな気がするある夏の日の夜の出来事だった。


以上

注 スチーム城 大友克洋監督作品「スチームボーイ」に登場するある蒸気機関。映画では・・・。
 


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