ルメール・フルニエ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2004年08月03日 | |||||||||||||||||||||||
<はじめに> 今回はスペシャル企画として、山梨県下のワイナリーの若手醸造家たちとのテイスティング会を開催し、PHや残糖などのテクニカルなデータをチェックしながら、普段とは違って造り手としての立場からワインにアプローチする機会に恵まれ、その司会進行とサービスを担当させてもらいつつ、大いなる議論が交わされたのだった。そのときの模様をダイジェスト的にというか、ちょっと紹介してみたい。ワインはワインクーラーに氷を張ってすべてギンギン系に冷やしたが、クーラーをそれほど強くは効かせなかったので、グラスに注げばすぐに温度は上昇した。使用グラスはINAO。葡萄品種はすべてシュナン・ブラン100%である。 Vouvray Methode traditionelle ヴーヴレ・メソッド・トラディショネル 明記はされていないものの2001年ビンテージのペティヤン(発泡酒)。新鮮な果実味と言うよりは、少し熟成感を伴ったニュアンスがあり、発泡酒ながら控えめで地味なニュアンスが面白い。 Vouvray LA GAZILLE 2002 ヴーヴレ・ラ・ガジール こちらは2002年で、ペール・イエロー系の色合いも楽しげで、新鮮な果実が前面にあり、カリンの香りもハッピーだ。ペティヤン(発泡酒)らしい勢い感も楽しい。ロートルを正統的に発泡させたニュアンスで、なかなかに好感が持てる逸品。 Vin de Table francais L’AUTRE (2002) ヴァン・ド・ターブル・ロートル 筆者お気に入りの逸品は、今宵も快調に微発泡していて、(かなり冷やしたので泡の出方は最もおとなしかった)、酵母の香り立ちに隠れてカリンやグレープフルーツ、洋ナシなどの果実香が加わり、フレッシュジュースのニュアンスにも近く、また蜂蜜の感じもあり、とてもハッピーになる。ケース買いも視野に入れるべしだ。 Vouvray Sec 2002 ヴーヴレ・セック(辛口) ロートルがAOCを取れなかった理由は、このACヴーヴレを楽しめば一目(一飲?)瞭然だ。ワインから発せられる情報は、微発泡の要素も含めて、近似値を示すものの、その濃縮感や余韻はさすがAOCといたくなるほど充実していて、シュナンブランの実力を大いに開花させている。ずばり美味しい。ケース買いかも。 Vouvray demi-sec LES MORANDIERES 2002 ヴーヴレ ドゥミ・セック(半甘口) レ・モランディエール 痛恨のブショネ。残念。 Vouvray Moelleux La FERME 2002 ヴーヴレ・モワユー(甘口) ラ・フェルメ 甘口を予想しているとそれほど甘みを感じず、食事中でもいけそうな感じが面白い。トロミ感は少なく、しかしミネラル感はたっぷりで、さっぱりとした甘さが好印象。しかし食後酒としての位置づけほどには「甘さ」が足りないので、中華料理なら酢豚などにあわせたら面白いかもしれない。 <まとめ> 6種類には味わい的に共通するものがあり、ブルゴーニュ魂的には「ハッピーワイン」のカテゴリーの中心にありそうな、とてもたのしいワインであり、素敵なラインナップであった。何度でも飲みたいワインに感激である。 そもそも甲府でビオ系のシュナン・ブランの水平テイスティングを企画したのは、甲州種との共通点にワイン造りの参考になればという思いがあったからだ。それはつまり、同じ産地のひとつの品種で辛口・半甘口・甘口の味わいを造り分け、スティルワインとスパークリングワインというふたつのカテゴリーを造りだしているということに、甲州種との共通項を確認するからだ。 今回のワインの感想で面白かったのは、甲州でのワイン造りにおいて、甘口から辛口まで、どの味わいを意図するかによってニーズやターゲットが異なり、その味わいを何本造ることによって、どう市場に展開していくべきかを議論する絶好の材料になったという某氏の意見だった。ルメール・フルニエのワインはその葡萄品種の特性を完璧に把握した上で、計算づくで造られた印象があるという。(そのひとつの例として意図的な微発泡=二酸化炭素の注入が挙げられる) これは、げすに例えるならば、孫悟空の、時に傍若無人な大活躍を空想する時、所詮は三蔵法師の掌で暴れまくっていただけというようなものだろうか。すべては三蔵法師によって制御された味わいを感じ、自然派のワイン造りと人間と葡萄品種と醸造技術が巧みに連動しているようでもある。たとえば、三蔵法師をルメール・フルニエに、孫悟空をシュナンブランと置き換えて読み解くことも面白いし、またもっと大きな枠として、三蔵法師をロワール(ヴーヴレ地区)のテロワールとし、孫悟空をルメール・フルニエと置き換え、如意棒(という名前だったかな)を醸造技術と置き換えるのも悪くないかもしれない。配役を誰にするかによって見えてくるものも違ってくるぞ。これはいろいろ試したい作業かもしれない。 葡萄の個性と畑の恵みを熟知した男が、理路整然と造り上げた逸品。それは甘口から、半甘口、辛口へと味わいを異にしながら、葡萄の個性とテロワールを違う方法で表現しているかのようでもある。そしてそのどれもが美しいワインに仕上げられていて、夏向きの味わいにして、この夏の食卓を大いに盛り上げてくれそうなバリエーションの多さとテーストに、思わず頬も緩むというものだ。 今回の詳細なコメントは控えつつも、どうやらシュナン・ブランは相当に面白い品種で、それは甲州とも共通し、ブルゴーニュ魂としても俄然注目していきたいと思いつつ、ワインがなくなったので、このあと4本のロワールワインを飲みながら、素敵な甲府の夜は更けていったのだった・・・。 以上 |