ミッシェル・グロ
試飲日 2001年2月25・28日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯・白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine Michel GROS (Vosne-Romanee)
Vintage 1998
テーマ グロ家の伝統 二度目の登場。
ワイン VOSNE-ROMANEE 1er Cru CLOS DES REAS MONOPOLE
 

<はじめに>
 グロのヴォーヌ・ロマネ・クロ・デ・レアは前回のレポート95年ビンテージ(ジャン・グロ参照)に続いて2回目の登場である。今回のワインは息子のミッシェル名でリリースされているが、前回の95年ものも名前こそジャン名義(ミッシェルの父)で出ているが、醸造はミッシャル本人が担当している。つまり同じ造り手のビンテージ違いということになる。
 二月下旬のある日、98年ビンテージを違う条件の下で試飲する機会に恵まれた。感謝と共に、飲み方の違いがこれほどまでに味わいを変えてしまう驚きを素直に伝えてみたい。

 今回の貴重なテイスティングは、俗に言うブラインド・テイスティングの切なさに一石を投じるものとして極めて興味深かった。ワインはその飲み方によって味わいも趣も印象も変える。そのワインにはベストの飲み方があるはずで、その壺を押さえてこそ悦びを共有できる。ブラインド・テイスティング(ワイン名を伏せてワインの味覚によってその銘柄を当てること)はワインのプロ以外の人間にとっては単なるワイン当てクイズに他ならず、それを目的にするならそれも一興であるが、グロ家伝統の味は、味わいそのものを堪能すべきレベルであって、貴重なワインであるがゆえに、ベストの飲み方で楽しみたいものである。


<味の印象 一回目>
 ボトルからそのまま試飲。黒系のルビー色をともなった果実味。やや青臭さを感じ、茹でたソーセージの皮をプチっと割った時と同じ香がする。しっかりした味わいはさすがはヴォーヌ・ロマネの一級である。しかしなにかインパクトに欠け、複雑味も感じられない。年末の1995ビンテージのあの悦びをひきずってしまい、なんだかもの足りなさを感じざるを得なかった。それでも空になったINAOグラスは焦した甘い香に包まれていて、このワインが並みのワインでないことは証明していた。


<味の印象 二回目>  今回はほっそり型のテガンタに移し替えて待つこと2時間30分。飲み方の圧倒的な差はブルゴーニュを知り尽くす美人講師の判断によるものだ。その結果はINAOグラスの中でワインが自然に語りかけてきた。すごい。これはうまい。ううう、である。全く別物のワインだ。色合いも黒系を基調としながらもやや明るい。これは照明の違いからくるものだ。青臭さは今回の飲み方でも表面化してきたが、今回の青臭さはメロン系の趣である。下衆な言い方が許されるなら、その昔粉末シャーベットを水で溶かして、完全に凍るまで待つことができず、水っぽいシャーベットを頬ばったときのあのメロン味に似ている。甘くもあり、メロンの皮についた果肉のような香も彷彿とさせた。微妙な味わいは繊細で、それでいてしっかりとした存在感を示す。余韻も長くうまみ成分がしばらくは口周辺を漂ってくれている。なめし皮も感じられ、しばしうっとりである。


<まとめ>
 ワイン、特にブルゴーニュは難しい。二度の試飲は同じワインにもかかわらず、空け方の違いにより全く別のワインであった。常々、せっかくいいワインを飲む機会に恵まれたのだから、ベストの味を楽しみたいと思う。もし仮にブラインド・テイスティングをしたとして、この村の特徴を熟知していればこのワインがヴォーヌ・ロマネのワインであると当てられるかもしれない。ビンテージも当てられるかもしれない。しかしそこにあるのはワインを当てた喜び。決して二回目に味わえた感激には到達しないだろう。私はワインの銘柄を当てることより、ワインの味わいそのものを堪能したい。そして共有したい。
 今回のワインは両方ともミッシェル・グロの看板クロ・デ・レアであり、試飲できるだけでも幸運であるが、飲む条件の差による味の違いを知ることも楽しい。一回目より二回目、二回目より三回目といった具合に、ワインはよりおいしく飲みたいものである。同じワインを飲んで違う悦びを探し出す。そんな飲み方も理想である。ここにブルゴーニュの奥深さがあり、終りのない旅の途中でもある。

以上


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