ユベール・リニエ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2004年12月20日 | |||||||||||||||||||||||
<特級クロ・ド・ラ・ロッシュ キュベ・ルーシー> 抜栓後デカンタをして2時間弱ほど待ってからロブマイヤー・ブルゴーニュグラス(通称ミュジニグラス)へ。スミレやバラ、フランボワーズ、イチゴなどの香りが華やかに、しかしやや抑え目な印象で香っている。口に含めば、極めてエレガントな味わいで、丸みを帯びたボディ感とやや酸味ベースなバランスが絶妙で、とてもすばらしい気持ちになる。余韻は長く、いつまでもゆらめきながら静かな時を満喫させてくれている。時間と共に黒系果実の割合が増し、チョコやカカオ、黒糖系のコクのある味わいに変化しつつ、妖艶な味わいが印象的。華やかさを持ちながら、土台の部分はしっかりと根を張った特級ワインであり、このミネラル感は古の「海」を思い起こさせ、海岸線の独特の香りにも似た、あの風情に満ち溢れている。ロブマイヤーの美しいフォルムは、まさにこのクロ・ド・ラ・ロッシュのためにあるのではなかろうかと思うほど完璧な曲線を描いていて、口に当たる繊細さは、飲み手の意思を反映し、自分が飲みたいだけの量を静かに流し込んでくれている。すばらしい。 今回は事前の予想では、もう少し熟成モードが進み、甘酸っぱいニュアンスが前面に出ているかと思いきや、まだまだ果実味たっぷりで、大方の2000年ブルゴーニュが熟成のピークを駆け巡っているのに反し、まだまだこれからという大器晩成・長熟型のスタイルを思わせつつ、この瞬間にこれほどうまいワインもないので、飲むタイミングの奥深さを知るところである。 一方でリーデル・ヴィノム・ブルゴーニュに入れたほうは、少し違和感を伴っていて、このワインにはやはり少し大きすぎる容量と口当たりの繊細さに(ロブマイヤーと比べて)少し欠けるところが、残念であるかもしれない。しかしそれはグラスの価格差が4倍以上あることを考えれば、リーデルに不利なことは承知したりする。このワインは最高級のグラスで味わうべきであると信じる。 2000年はリニエ家の長女の誕生を記念して、彼女の名「ルーシー」をキュベ名にした逸品であるが、今年2004年7月末、まことに残念ながら急逝したロマン氏の自信作でもある。ワインを飲みながら、故人に哀悼の意を表したい。造り手は他界し、ワインは飲み干されてしまったが、今宵感じたすばらしい味わいは、生涯を通じて忘れることはないだろう。それほどにすばらしいワインであり、改めて天の恵み、大地の恵み、人の叡智に感謝なのである。合掌。 以上 |