シャソルネイ
試飲日 2005年03月12日
場 所    パリ某所
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方白ワイン
生産者 Domaine de Chassorney (Saint-Romain)
Vintage (2004)
テーマ 挑戦かポンポコリンか
ワイン POËT (Vin de table)

<ポエ (テーブルワイン)>
 このワインは、スティルワインではなく、スパークリングのカテゴリーに入りそうなワインであり、モエ・エ・シャンドンとポメリーを連想させるポエというネイミングには賛否も両論ありそうな気配を感じつつ、このワインについての説明を先にしてみよう。裏ラベルによれば、2000年にサンロマンの畑に植えられた葡萄を2004年10月3日に収穫し、天然酵母による発酵、補糖なし、酸化防止剤未添加、ノンフィルターによって造られたワインで、アルコール度数は11度。価格はカーブ・オージェで13.5ユーロ(約1,890円)という代物。オージェの店員によれば、シャルドネ100%という。コルクが使用されているが、その上に王冠がかけられ、王冠に張られた納税証明書(マリアンヌ)の色はブルーだ。(コルクと王冠の組合せバージョンは、パタポン・ブランなどロワール産ワインにたまに見かけるが、ブルゴーニュでは珍しいかも・・・)。

 このワインは、活動する酵母とともに瓶詰めされているために当然のごとく瓶内二次発酵、(というより一時発酵の延長?)があり、そのために発生する二酸化炭素の圧力によりコルクが吹き飛ぶことを避けるために、王冠で密閉しているものと推測される。ワインは店頭では立てられた状態で販売されていて、澱が瓶の底にたっぷりと確認できる。その折はパリ市内を歩いているうちに舞ってしまった。また前述の理由から取り除くことは不可能のように思われる。(抜栓時に自分でデゴルジュマンできるという説もあるが・・・)

 まずは、王冠をあけると、いきなりワインがプシュッと染み出していて、私をあわてさせる。幾分沈んでいるコルクの上にワインが溜まっている状態だ。ティッシュで水分を取り除き、ソムリエナイフを立てつつ、ちょっと油断した隙にコルクは途中で折れてしまった。久しぶりに抜栓に失敗しつつ、かなりゆるくなっているコルクを改めて抜栓しようとするが、出来た隙間からワインがあふれ出し、しかたなくコルクはボトルへと沈めてしまった。2/3ほど残ったコルクには2002年のビンテージが刻印されていたりする・・・。かなりの量が外にあふれ出しつつ、テーブルを拭き拭き、グラスに注ぐとクレマンとペティヤンの中間くらいの泡立ち。ワインはやや黄色みがかった白色の濁りで、口に含めば発酵途中の葡萄果汁を思い起こさせ、それは奥野田葡萄酒醸造の「冬花火」を彷彿とさせる味わいだ。口当たりはよく、まろやかな味わいに酸味が加わり、ごくごく飲めるタイプの面白い味わい。ごくごく飲んで、「ぷはぁ」と息づく、そんな感じのデイリーワインかもしれないが、地ビールを連想させながらも、パリで2000円近い価格を考えると、ちょっと考えたりもするワインだろう。

 はて・・・。

 当主フレデリック・コサールの新たなる挑戦は、吉と出るか凶と出るか。土着の微生物を尊重するビオディナミストにとって理想的なワイン醸造を試作しながらも、酸化防止剤未使用による発酵の継続と、それを意識する王冠の使用は、賛否を分けるものと思われる。樹齢3年の若木を使用し、酸化防止剤の未使用によるワイン造り。これをポエというオヤジ逆的なネイミングと共に、それを農民フレデリックのおちゃめな試みとみるか、商人フレデリックの奇策とみるか、飲み手の判断が待たれるところだろう。私はどちらかというと後者の方を意識せざるをえなかったりしつつ、(はじめからペティヤンしようにすれば納得できるが、コルクが用を立っておらず、ちょっと遊びすぎ?)、このワインが日本で発売されるのかどうか心配だ。日本ではもっと泡立ちもよかろうと思いながらも3000円を超える価格が想定されることから、みんなが集まった時に割り勘で飲むのが、一番よさげなワインかも知れない。

 このフレデリックのおちゃめなワインは、いくつかの思い当たる理由によってフレデリックを嫌う人々には、あまり見せないほうがよいかもしれない。アンチ・ビオディナミの人々の逆鱗に触れそうな予感が漂っているもんで・・・(笑)。


おしまい

 


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