ドニ・モルテ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2005年03月18日 | |||||||||||||||||||||||
<ジュブレ・シャンベルタン1級ラボー・サン・ジャック> 抜栓後すぐにブショネチェック分だけ抜いて2時間ほど待つ。いい具合に熟成していて、この待ち時間も楽しい限りだ。リーデル・ヴィノム・ブルゴーニュグラスに注ぐと、茶色みがかった熟成色を伴う美しいルビー色で、香りには美しいブーケが豊かに香っている。本枯れの鰹節に、湿った土壌香、干しイチヂク、キノコやなめし皮のニュアンスが楽しく、熟成の妙に心も弾む。口に含めば、力強さやパワフルさはもっておらず、おしとやかなベールに身を包まれたかのようなシルキーな味わい。それはあたかもふかふかの大地に足を踏み入れたかのような優しい感触で、気持ちがとても穏やかになっていく。ミネラル感もあり、余韻も長い。とても美味しいジュブレ・シャンベルタンである。 かつてはその堅い酸のために抜栓に苦労した1995年のブルゴーニュも、今ではゆったりと花開き、とても落ち着いた味わいを醸しだしている。美味であり、とても穏やかである。今後しばらくはこの路線を継承しながら、ゆったりとゆったりとその使命を終えるかのような、そんな味わいに感慨もひとしおだ。 さて、このワインは購入後3年ほど経っていて、(出会ったときが飲み頃を信条にするものにとって、これは異例なほど長い年月かも)、当時、このワインを買った光景が鮮やかに目に浮かんでくる。某所の左側の棚に3本ほど置いてあったものの真ん中を選んで、ボトルをラップに巻いてセラーに安置してから、もう3年、まだ3年の歳月が流れてしまっていた。「歌は世に連れ、世は歌につれ」とは言うが、ワインにもそんな個人的な歴史を紐解く力を持っていて、もう一生出会うことのないワインとの出会いと別れに、なんだか今宵は少しばかり感傷的だ。 長年連れ添ったワインを楽しむ夜。グラスの中には味わい云々よりも、もっと深い何かを意識し、ほろ酔い加減に言い訳しつつ、なんだかとてもセンチメンタルになるから不思議だ。これぞ他のお酒にはないワインの魅力のひとつなのだろう。 おしまい |