エグリ・ウリエ
試飲日 2005年04月17日
場 所    神奈川県内某所
照 明 白熱灯
種 類 フランス シャンパーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Egly-Ouriet (Ambonnay)  
Vintage 2002
テーマ ル・クラスモンの10点満点
ワイン Coteaux Champenois Ambonnay

<コトー・シャンプノワ アンボネイ>
 
エグリ・ウリエのコトー・シャンプノワはピノノワール100%の赤ワインで、フランスの評価本「ル・クラスモン」がこの2002年に10点満点の評価を与えたことで知られており、大磯のワインセミナーで登場しつつ、試しに飲んでみた。
 
 抜栓後すぐINAOグラスへ。美しいルビー色は、艶やかな照りを持っていて、透明感があり、ある意味、吸い込まれていきそうな不思議な色合い。香は樽香のニュアンスが強く、他の果実香を押さえつけている印象があり、その点が評価を分けそうではあるが、ピュアな赤系果実と黒系果実が織りなすハーモニーが心の奥をくすぐってくる。(甘草)リコリスやスミレのニュアンスもあり、妖艶なスパイスさも持ち合わせている。口に含めば、水の如しの滑らかさで、するりと喉を通過する不思議な液体。酸とタンニンと果実味のバランスがすばらしく、おそらく限りなく球体に近い味わいだ。

 そして、このワインの本領は、あっけなく喉を通過してから静かにやってくる。うまいのである。自分の吐いた息が、甘みを帯びたうまみ成分に満ち溢れ、とてつもなく長い余韻に包まれるのだ。

 うまい。これは、うまい。そしてなんだか知らないけれど、涙腺も少しばかり刺激してきて、「うわっこれはくるなあ」と呟きつつ、ほっと体も温まってくるのだった。

 確かにこの味わいなら、ル・クラスモンが10点満点をつけてくるのは、わからないでもない。究極の液体がここに存在しているのだから・・・。しかし、新樽に由来するバニラのニュアンスが、私には邪魔に感じられ、この樽香さえなければ、いいのになあと素直な感想もこぼしたくなるのだった。このワインが、ドミニク・ローランの樽ではなく、フランソワ・フレールの樽で熟成されていたなら・・・。歴史に「もしも」がないように、エグリ・ウリエの樽熟成にはドミニク・ローラン樽以外は存在しないので、なんとも悲しい空想だが、この樽香さえなければ、過去最高の味わいと明言しても過言ではないほどの美しさを持ったワインだけに、その点が残念でならなく、またこの樽香をプラスに評価した「ル・クラスモン」とも一線を画しているんだなあとしみじみ思ってしまった。

 他者がつけた満点が、必ずしも自分にとっての満点にはならないことを思いつつ、それでもこの究極の赤い液体に身を寄せるのは、甘く切ない味わいが好きな私には、とても居心地の良い瞬間なのであった。


以上

 


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