アルマン・ルソー
試飲日 2005年09月10日
場 所    神奈川県某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス・ブルゴーニュ地方赤ワイン
生産者 Armand ROUSSEAU (Gevrey-Chambertin)
Vintage 1995
テーマ ルソーの95
ワイン CHAMBERTIN CLOS DE BEZE Grand cru

<シャンベルタン クロ・ド・ベズ>

  今回は、デカンタをせずに普通に注いだ場合のワインの味わいについて検証すべく、ワインセラーから静かに取り出して、抜栓後すぐにINAOグラスへ。色合いはまだ黒々としていて、エッジに微かに熟成色が見られる程度で、その色合いに特級ワイン特有の威圧感を意識したりする。香は全く閉じていて、かすかにスパイスやカシス、ブラックベリーなど黒系果実があるようだ。口に含めば、エキス感や濃縮感はあるものの、タンニンと酸のバランスも悪く、それは決して不味くはなく、うまいけれども、どことのない閉塞感に、微妙さ具合が見受けられた。

 そこでグラスをロブマイヤーNo.3も用意して、そのまま注ぐ。香が開いた感触と、スケールの大きさを感じるものの、まだまだどっちつかずの状態が続く。うーん、である。

 で、某氏らと歓談などしつつ、30分ほど経過して、何気にINAOグラスを持ってみれば、おっと、ガツンと開いてくるではないか。それは、あまりにも突然開いたという印象で、5分前に試したときは硬直状態が続いていたことからも、私を少しばかり驚かせることとなった。なめし皮のニュアンスに、黒系の胡椒と、黒系果実のボリュームある香立ちが、思わず私を仰け反らせ、そして「うっ」と唸らせる。口の中を豊かにするグリップ感も申し分なく、ドライな辛口感の中にほんのりとした甘みに通じるうまみ成分も表面化して、心地がよい。余韻は極めて長く、クロドベズの威厳を感じさせる逸品が目前に出現した想いが、うれしくなってくる。そしてまた、ロブマイヤーのそれは、シルキーなうまみとがっちりとした骨格感が絶妙なハーモニーを繰り広げ、「うまいなあ。おいしいなあ」としか発せられない状況を作り出してくるから凄い。

 やはりワインは飲み方ひとつで決まる。時間の経過により、温度が室温に馴染み、ワインが花開き、そしてうまみが押し寄せる。普通に飲んでいたのでは、このうまみの頂点に到達する前に、飲み干してしまう可能性があり、デカンタやグラスの選定、温度管理の配慮にこだわれば、ワインの持つポテンシャルを十二分に引き出すこともでき、それはただ飲むだけでなく芸術の域に達するワインであればあるほど、ワインに気を遣う人の存在の有無が、ワインの味わいにダイレクトに関連してくるのだと確信する。

 さあ、花開いたクロドベズのグラスを右手に持ちつつ、これから本当の意味で始まるクロドベズのうまみワールドに身を寄せ、大地の悲しいまでの宿命を肌で感じるのだった。


おしまい

 


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