D.R.C.
試飲日 2005年09月18日
場 所    ロウホウトイ
照 明 不明
種 類 フランス・ブルゴーニュ地方白ワイン
生産者 Domaone de la Romanée-Conti (Vosne-Romanée)
Vintage 1989
テーマ DRCのモントラシェット
ワイン MONTRACHET Grand cru

<モンラッシェ>

  ブルゴーニュというよりも、辛口白ワインというカテゴリーにおいて、その頂点に君臨する特級モンラッシェをDRCの作で飲むということは、一体何を意味するのだろうか。

 リーデル・ソムリエシリーズ・モンラッシェに注がれたモンラッシェは、絶品の域をかくも引き上げた。美しい金色は、艶やかに輝き、あたかもグラスの中に吸い込まれるような美しさを持っていた。香は、時間とともに複雑さと洗練さをまし、極めてエレガントに、そして極めて孤高にその豊潤なブーケでもって私を魅了した。香ばしいヘーゼルナッツ香に、売れたハチミツ、バター香をベースにバニラや品よく焦がし目のついた香が、これまた締め付けられるようなインパクトを持っているからだ。ハチミツ香は時間と共に成長し、当初は子供用にあつらえられたか、ホットケーキに添えられたようなニュアンスが強かったが、香そのものの成長につけ、急激にフィネスを持ち始め、最後はハチミツ香的天上界レベルにまで達するところが、凄かった。それは胸が締め付けられるほどであり、涙腺を押さえつけられたかのようでもあり、心にきつく突き刺さる香だった。

 味わいは、予想通り、あっけないほどの飲みやすさで、するりと喉もとを通り抜ける心地よさ。もっと滞空時間を長くしたいと思いながらも、ごくりと飲み込んでしまうところに、究極の液体の由縁を思い知る。しかし、飲み込んでから押しもどってくるうまみ成分の波の高さは尋常ではなく、そしてその後延々と続く余韻に、どこか落ち着きを保てない自分に気づいたりもする。そしてモンラッシェという圧倒的な存在感の中において、飲み手はただ、この絶妙のバランス感覚とスケールの大きさに、「やっぱり、凄い」の一言だけ発し、あとは沈黙の中で余韻に浸ればいいだけのことかもしれない。

 ところで、今回のモンラッシェにあたり、グラスは5種類用意した。【INAOグラス】、【リーデル・ソムリエシリーズ・モンラッシェ】、【リーデル・ヴィノムシリーズ・ブルゴーニュ】、【ロブマイヤー・ブルゴーニュ】、そして【ロブマイヤー・ブルゴーニュV】の5つ。

 残念ながら、【INAOグラス】では、このポテンシャルを全く引き出せず、ただ色の濃い、香も何かに押さえつけられたかのような圧迫感を感じつつ、普通のシャルドネの味に落ち着いてしまった。また【ロブマイヤー・ブルゴーニュV】では、香の引篭もり感が凄く、会の終了間際にようやく花開く感じがあり、グラス的には難しさを露呈したが、後半のワールドには特筆すべき要素もあり、これは好みの問題かもしれない。残りのグラスは他のグラスほどには違いは見受けられなかったが、それでもモンラッシェグラスと銘打ちだけのことはあり、リーデルのそれが、一歩というよりは二歩ほど抜きん出ていたかも知れず、グラス選択の妙も知的好奇心をクスグッてきたから楽しい。

 シャルドネの最高傑作を問われれば、やはりモンラッシェ。その事実は、きちりと受け留めなければ、ならないのだろう。16年の歳月を経たDRCのモンラッシェ・・・。脱帽して、跪いたデュマの心境を、まさに共有した思いである。


おしまい

 


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