コント・ド・ヴォギュエ
試飲日 2006年01月09日
場 所    神奈川県某所
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方赤ワイン
生産者 Comte de VOGUE (Chambolle-Musigny)
Vintage 2003
テーマ ボグエの2003
ワイン 2003 bourgogne blanc
2003 Chambolle-Musigny
2003 Chambolle-Musigny 1er cru
2003 Chambolle-Musigny 1er Les Amoureuses
2003 BONNES-MARES
2003 MUSIGNY VV

<ヴォグエの2003>
 すべてのワインは、室温になじませてから、ダブルデカンタをして(ブルゴーニュのみシングルデカンタ)、小一時間から2時間半ほどの時間軸をとりながら、順繰りにロブマイヤー社バレリーナ・シリーズのグラスVまたはブルゴーニュグラスへゆっくりとサービスした。私は、サービスをしつつ、某氏や某氏などのグラスを拝借し、折を見ていろいろと試させていただいた。

 結論を先に述べるなら、ボグエの2003年は、今、とてもおいしい。

 そしてグラスVとブルゴーニュという二つのグラスを併用すれば、自ずとそのワインのアペラシオンの個性も浮き上がってきて、グラスという切り口を持ってすれば、それぞれのワインの個性がつまびらかにされるようでもあり、教科書的なそれぞれの畑の個性を、最高レベルで表現し、一部のワインにいたっては官能の領域に達しているところがすごいと思うのだった。しかし、一方で、酷暑ゆえの酸の不足感、あるいはなにかしらの違和感は否定できず、2003年を他のビンテージと比べるならば、抱え込む弱点を露呈させるかもしれないが、2003年ビンテージだけで楽しむならば、そんな思いは杞憂で終わりそうだと思わせてくれるところが面白い。

 【ブルゴーニュ白】
 ブルゴーニュグラスとの相性は抜群で、透明感漂う輝きのある金色で、その照り具合は美しいの範疇にある。2003年をして、残糖感が厳しいかと予想されたが、意に反しきっちりと辛口で、酸の少なさを気に留めれば、否定はできないが悲観するほどでもなく、素直においしいワインであり、特級への昇格はまだまだとは思いつつ、2003年という例外的なビンテージにつき、南の特級(ピュリニーやシャサーニュ)に比べれば、北に位置するアドバンテージを発揮し、一級以上あるいは特級の最下層あたりには存在していそうな気配が好印象だったりもする。(ただしグラス効果という説も・・・)


 【シャンボール・ミュジニ1級レザムルーズ】
 この畑の特級待望論は、たびたび囁かれるが、私見によれば、この畑は一級にとどまるべきであり、事実、二つの特級と飲み比べれば、質の面から、それを受け入れざるを得ないと思われる。なぜか。それは、味わうべきグラスが確定できないところにある。ミュジニがブルゴーニュグラスとの相性の完璧さを見せつけ、方やボンヌマールがグラスVにおいてその味わいの頂点を表現できるのに対し、レザムルーズは、その両方とも相性のよさを見せつつも、どちらとも何かしらの不足感を与えるところに、違和感を覚えてしまうからだ。レザムルーズの、時に見せつける荒々しさがその美しい名前との間にギャップを生じさせ、最高レベルでのおいしさが存在するにもかかわらず、もうひとつ何かがあってほしいと思うのが残念と思うのだった。レザムルーズは一級ワインであると、ボグエをして思ったりする。(好みという説も・・・)


 【ボンヌ・マール】
 レザムルーズとの差は、特級と一級ほどにあり、それはある面においては好みの領域といえなくもなく、感じ方は人それぞれと思うものの、やはりボンヌ・マールはすばらしかった。世のボグエ愛好家は、希少なレザムルーズには行列を作り、生産量が多いボンヌ・マールには、一定の距離感を持っていると思われるが、飲むべきはやはりボンヌ・マールと思ったりする。男性的で、パワフルな味わいのボンヌ・マールは、その香をグラスVによって開花させ、香の官能性という一面からすれば、ミュジニを凌駕していた。醸造責任者のフランソワ・ミレ氏はこのワインについて、シャンボールの父親的存在と比ゆしたが、まさにその例えのごとく、スケールが大きく、そして力強い、すごいワインである。しかし長期に熟成させるよりも、このタイミングで飲む喜びに比重を置きたかったりする。


 【ミュジニ VV】
 圧巻である。その美しさ、華やかさ、そして奥深さ。球体に程近い味わいは、2003年の濃い色合いに反して、とてもエレガントであり、泉鏡花に通じる気品を感じざるを得ないのである。さすがミュジニ。この味わいを表現するために、ボグエはこの区画の若木をすべて一級ワインに格下げし、この特級畑の奇跡を最大限に、尊重しているのだと推測される。ロマネ・コンティの対抗馬は、このミュジニかもしれない・・・。ふとそんなことを思いつつも、しかし、一方ではミュジニとブルゴーニュグラスの完璧な相性は、このグラスにおけるシャルドネ種による特級ワインとの相性のよさに共通項を見出し、コルトンの丘の両品種が、モンラッシェにも、ロマネ・コンティにも勝ることがないという現実を悟らせ、ピノ・ノワールとシャルドネの両方の最適地という素性のすばらしさと、それゆえにモンラッシェやロマネ・コンティなどの単一品種専用畑には後塵を拝せざるを得ない現実の両面に板ばさみとなったりもする。

 特級ミュジニの、この味わいのすばらしさは、ブルゴーニュのヒエラルキーの例外的なおいしさなのかもしれない。そして余談ながら、他メーカー(失念)の一般的なブルゴーニュグラスを使用してみたが、残念ながらミュジニのタニックな面と酸味が強調され、球体の形は見事に崩れ、ずれぎこちない味わいになってしまったことも付記せざるを得ないだろう。

 2003年のボグエは、グラスを選びたい。そうすれば・・・。


おしまい

 


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