デュジャック | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2006年01月15日 | |||||||||||||||||||||||
<デュジャックの2003> 今回、縁あって2003年のデュジャックの特級ワインを三本ほど飲み比べした。飲み方は、室温になじませてからデカンタージュをして小一時間ほど待ってからロブマイヤー・バレリーナ・グラスVへサービスし、一部はブルゴーニュグラスにも注いでみた。同時に比べるのではなく、じっくりワインと勝負した後、順繰りに時間をかけて楽しむスタイルをとった。 結果は・・・。 三本ともおいしいワインである。しかし・・・(しかし以降の比重が99%を占めるかも) かつて、デュジャック節と歌われた、甘酸っぱくて、切ない、和の道に通じるお出し系の味わいは、どうやら人々の過去の記憶にのみ存在するようで、2003年というイレギュラーなビンテージを考慮してもなお、グッバイ・デュジャークの心境が悲しげだったりする。決して不味いわけでもなく、おいしいワインとして評価され、初めてブルゴーニュを楽しむ人には容易に受け入れられるような気配もあるが、いかんせん、樽香の効きすぎた味わいは、ブルゴーニュで造るカリフォルニアワインの印象が強く、「デュジャック物語」の最終巻を読み終えた心境である。(読後清涼感は・・・・ない) 色合いは濃く、紫色を配するハイ・インパクト系であるが、2003年を考えれば、それは想定内の色合いだ。しかし、香は、樽に由来するものが圧倒的に強く、2003年らしい黒系の果実味よりも、カカオ、チョコレート、バニリン、焦がし香が鼻腔を占領している。これは、強弱こそあれ、この三本に共通するイメージ。アルコール感は強く、それは余韻の強さにも影響を与えているように思われたりする。残糖感はそれほど持たないが、酸の切れは今ひとつで、全体として2万円近い価格を考えれば、デュジャックにある種の悟りの境地を求めるものには、微妙と思わざるを得ない。黒こしょう系の香の強さも、デュジャックを意識すると、違和感を持つかもしれない。しいて言うなれば、このワインがデュジャックである必要はまったくなく、価格が1/4ほどで買い求められるドメーヌ・ジャイエ・ジルのコート・ド・ボーヌ・ビラージュあたりを数本購入したほうが、健全で、安心しておいしく飲めることだろう。あるいは、カリフォルニアのピノ・ノワールならば、探せば、同じ予算で1ケースくらい買えそうだから怖かったりする。 三本の個性も、確かに存在するが、樽に支配された香からは、その本質的な違いを感じることはできなく、比べて飲めば味わいに強弱があり、クロ・サン・ドニのポテンシャルが一歩抜きん出ている印象を持ちつつも、チョコレートでコーティングされたどんぐりの背比べ的と比喩することもできそうで、少し、悲しかったりする。 そして衝撃が走る。バレリーナ・ブルゴーニュグラスに注いで10分位すると、デュジャックのクロ・ド・ラ・ロッシュは、その果実味をまったく失い、色のついたアルコール水へと変貌してしまったのだ。このグラスは、華やかなワインを極限状態で表現する最高のグラスであるが、油断すると、ワインの本質を表面にさらけ出してしまうほどの威力を持っており、正体がばれるリスクを持っていることを忘れてしまっていた。(他の二本は何とか持ちこたえられた・・・) 2003年のデュジャックは、濃くって、スパイシーで、樽香が好きで、飲み応えのあるワインが好きな人には、歓迎される味わいかもしれないが、ぶどう本来の力の弱さを嘆きつつ、往年のデュジャックのワインに何度も目を潤ませた人には完全に別物としか捕らえられない違和感を持つことだろう。しかも最近の自然派ワインに慣れ、新樽香に違和感を持つようになると、なおさらだ。 ドメーヌ・デュジャックed・・・。 おしまい | |||||||||||||||||||||||