＜アリゴテ＞
　少し冷やして、抜栓後すぐに巷でよくある、小ぶりの普通のワイングラスへ。ん。酒石が舞ってワインが濁ってしまったかと思いつつ、よくよく見れば、微発砲していて、木目の粗い泡がグラスの内側に、金魚の卵的にくっついていた。そしてさらによく見れば、酒石は舞っておらず、そもそもこのワインは濁り系であることに気づいたりした。薄い金色が、気持ち白濁しているようなそんなニュアンスだ。香は、カリンちっくで、心配された酸化臭はなく、酵母の香含みのいわゆる自然派の白ワイン的な、穏やかな香立ちだ。口に含めば、微発泡を感じつつ、滑らかすっぱい味わいで、グビグビいける安心感漂うやさしい味わい。これはうまいなあと、コップに近いワイングラスをくびくびあけつつ、てんぷらが揚がるのを待っていたのだが、どうやら天麩羅よりも早いピッチを止めることができず、いよいよ登場した海老の頭がカリカリに揚げられたころには、このワインはなくなってしまっていたのだった。

　多分、このアリゴテは、天麩羅に合うと思う。天麩羅屋さんのその現場に居ながらにして、そのマリアージュを試せなかった後悔は、ほんの一瞬しか持たず、続いて飲んだピノ・ノワールとの相性にこれぞという思いを感じつつ、もうすっかりいい気分なのである。

　和の道に通じるド・ムールのアリゴテ2004・・・うまいなあ。


おしまい