ジョルジュ・ルーミエ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2006年03月05日 | |||||||||||||||||||||||
<ルーミエの3ビンテージ> ワインセミナーにて。いろいろあって不思議な組み合わせにて、ルーミエの3ビンテージを比較することになった。この中でまず記しておかなければならないのは、1999モレサンドニ1級クロ・ド・ラ・ビュシエールだろう。一般的にブルゴーニュの1999はグレートビンテージのひとつに挙げられているが、個人的にその評価に疑問詞を点灯させているものとして、ルーミエの作が非常に気になっていた。 INAOグラスとロブマイヤー・グラスVで楽しんだのだが、私には予想通りというか、大方の人には期待はずれというか、1999からイメージする濃縮感や長期に熟成させたい期待感は余り感じられず、果実味がうっすらと抜けつつある味わいになっているだ。このワインはアタックの強さに期待するのではなく、むしろ飲み込んでから余韻を楽しむまでの、いわゆる口の中での後半戦に楽しみの重きを置くべき味わいだと思われた。バレリーナ・グラスVにぴたりと収まるモレ・サン・ドニ1級クロ・ド・ラ・ビュシエールには、やや内向きのベクトルを感じ、この村の特徴でもある「くぐもる感」が印象的で、滑らかなタンニンとこなれた酸が、全体を優しいモードに誘ってくれる。パワーはないが、しっぽりいい感じのワインで、シャンボールの華やかさと比べれば、モレの個性も引き立つというものだ。 2000年ビンテージは、3つのワイン共に、予想よりも硬めな印象を持ち、ドニ・モルテの2000ジュブレ1級が見事な熟成モードを開花させているのとは対照的に、まだまだこれから感が面白かったりする。ルーミエの2000シャンボールは、華やかなイメージどおりのシャンボール・ミュジニであるが、一級レクラを口にしてしまうと、村名にはなかなか戻ることができず、ここにブルゴーニュのAOC制度の正確さを思い知ったりもする。ACシャンボール・ミュジニは、一級レクラの前に完全に飲み干したほうが、おいしく味わえるのが、痛し痒しというか、それは当然の成り行きなのである。 2001年ビンテージは、やはり硬い味わいだった。まだ懐を完全には開いておらず、何かかたくなに「閉じ」にこだわっている印象を持たざるを得なかった。しかし、グラスの妙に触れるうちに、それが徐々に開花する様は、なんだかとてもしあわせで、ワインをおいしくコントロールできた時に、いつもとはちょっと違ったうれしさもこみ上げてくるから面白い。2001年は飲み方が難しいが、ふとした瞬間にそのおいしさが現れると、ワインを熟成させなくてもこれほどおいしいのかとため息もつくことができ、その場その場に応じた楽しみ方を提案してくれるようで、2001年ビンテージは、個人的にお気に入りの年だったりもする。 そして今度は視点を変えて、グラスとの相性について。 用意したグラスはロブマイヤー社のバレリーナシリーズのうち、ブルゴーニュというタイプとグラスVというタイプ。この二つのグラスは、モレ・サン・ドニとシャンボール・ミュジニとでは、明らかにその適正の違いを見せ付けてくる。くぐもる感じのモレにはグラスVがよく似合い、華やかなシャンボールには、ブルゴーニュ・グラスが完璧な味わいを表現してくれる。この組み合わせは不変のようで、ワインとグラスを逆に入れ替えると、両者の個性は埋没して、それはちっともおいしくないワインへと変化してしまうから恐ろしいのである。 この不思議な感覚は、実際にそのグラスを試してもらわないと伝えることができないが、その不思議な世界を体感してしまうと、もう普通のグラスには戻れない怖さがあり、グラスの価格を考えると、それはまさに不幸の領域かもしれない(笑) いろいろあって変則的なラインナップとなってしまったが、3種類のワインを3ビンテージにて比べつつ、市場最高レベルのグラスを通して、それぞれのビンテージの個性と、それぞれの斜面の特徴が明確に浮き上がってくる様は、なんともアカデミックな感じがし、個人的には当会はうまくいったと思ったりしている。 参加頂いた皆さんは、どう感じられただろうか。 おしまい | |||||||||||||||||||||||