モメサン | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2001年4月3日 | |||||||||||||||||||||||
<味わい> 黒系の典型ともいえる奥深く深みのあるルビー色。この色は実に美しい。これはあたかも葡萄の幹の色を想像させるし、土の色とも重なって大地の恵みを表現しているようだ。赤く熟した果実の豊かなアロマ。粉っぽさも感じる。ちょうどコシュデュリーのモンテリー(赤)を思わせる甘く豊かな香である。次にでてきた香は華やかさを伴っている。いい。実にいい。味わいは濃縮感がうれしく、力強い。しみるような美味さ。上品な味わいに潜むタンニンは歯茎から水分を吸い取るような印象を受け、ワインなのに別の水気が欲しくなる。いや水そのものではない。例えばレアーに焼き上げられた極上の赤身肉からこぼれる肉汁が欲しい。肉のためにワインを飲むのではなく、ワインの力強さを和らげる肉汁が欲しい。こんな飲み応えは初めての経験であり、なんとも新鮮である。 少し落ち着いて二杯目を試飲。何せマグナムボトルなもので、10余名で試飲しても楽々と二杯分ある。黒系の味わいは上品なモレ・サン・ドニそのものであるが、特級といわれなければ気がつかないかもしれない。これはシャンベルタンのような圧倒的なパワーを持ち合わせていないためだろうか。ミュジニーのもつ繊細さとも違う印象を受けるためか。中間にして独特の個性がある。そしてこのワインもまた特級であると認識した時、特級ワインのひとつのあり方を問い掛けてもくれる。貴重な経験である。 ミサ用にボトリングされた1998年のマグナムボトルを2001年の春先に開けてしまうのも気が引けなくもないが、今飲んでこんなにおいしいのである。マグナムボトルを保存する環境を持たない者にとって、ワインは出会ったときがまさに飲み頃。いい。実にいい経験をさせてもらった。感謝である。 <クロ・ド・タール> モレ・サン・ドニ村の特級ワイン。クロ・デ・ランブレイとボンヌ・マールの間に位置し、ボジョレーやマコネで巨大ネゴシアンを営むモメサン(巨人ジョルジュ・デュブッフに次いで売上を誇るという)が単独所有している。7ha余りの畑は極上の立地である。この特級畑がブルゴーニュを代表しうる理由は、その由緒の正しさにある。資料によれば1250年以来葡萄の面積は不変であり、シトー派の修道尼僧によって守られてきた。1789年のフランス革命により没収され、今日の所有者モメサンに至るまで単独所有が守られてきた特異な存在である。畝づくりも他の畑と異なり斜面に沿って水平になっているので、遠目にも存在感をアピールしている。 以上 |