クロ・デュ・テュ・ブッフ
試飲日 2006年10月04日
場 所    自宅
照 明 白熱灯
種 類 フランス ロワール産赤ワイン
生産者 クロ・デュ・テュ・ブッフ
Vintage 2005
テーマ 思い出のワイン
ワイン Cheverny La Caillere

<シュベルニ ラ・カイエール>
 このワインには、思い出がある。このワインの葡萄がまだ畑に実っていたころの2005年7月に、日本屈指のワイナリーの若手醸造家ふたりと、この畑を訪ね、当主のテリー・ピュズラーとともに畑をぐるりと回ったことがあるからだ。テリー・ピュズラの提唱する自然のエコシステムに共感し、シュベルニの地にピノ・ノワールを育てる情熱に感激し、畑のあちこちに転がるシレックス(火打石)を口に含んだものだった。帰国後、隣のグラボットの畑は雹害にあったと聞き、このカイエールの畑にも少なからず影響があったものと推測されつつ、思い出のワインを口に含むのだった。

 今回は自宅での抜栓だったので、デカンタはせずに、そのままスピゲラウ社のヴィノグランデ、白ワインLのグラスに注いだ。(某社の試飲会で記念にもらったものです。一人飲みにはかなり重宝しています・・・)。幾分褐変系ながらも赤系の薄い色合いは、ロワールのピノ・ノワールらしく、自然と心も落ち着くから不思議だ。香りには、梅鰹系の果実香と白系のスパイス香がうっすらと感じられるが、いかんせん茎のニュアンスが強く、またヌカヅケ系の還元臭もあり、果実味ドカン系が好きな人には、この薄さとエグミは、グラスをもってしてそれを遠ざける可能性も否めない。この傾向は2004年と趣を同じにしている。口に含めば、リンゴが少し酸化したときと同じ味わいを感じる。しかしながら薄いながらも、とろりとした感じもあり、これはこれで悪くない味わいだ。このとろみは、アルコール度数13.5%に関連しているものと思われるが、ワインの厚みに貢献していると思われる。飲み込むと、乾いたタンニンから来るすこしの渇きと、それにもまして、従来になく「ゆるい薄さ」が、気になったりもする。(果実味が、少ないと思わざるを得ないのだ・・) しかし、そんな心配も、まもなくすると、喉から戻ってくるうまみ成分に取って代わられ、そのグラデーションも興味心身だ。余韻は長く、飲み進めるほどに心地よい酔いに身をゆだねたりする。

 いわゆる自然派が好きな人には、この味が身をくすぐってくるが、世の大多数を占めると思われるワインの果実味ガッツリに期待する人には、この薄さと茎っぽさには、言いようのない抵抗を感じることだろう。この味わいは、ワインセミナーで提供すると、苦手な人にはとことん苦手な味のようで、まったく手をつけられない方もいらっしゃるので、説明がやたらと長くなる割には、そのおいしさが伝えにくかったりする。

 2005年というフランスのビッグビンテージにして、シュベルニにも、いやがおうにもその期待を膨らませてしまうが、雹害という自然の悪戯を意識するとき、このワインは農作物なのだと実感したりするのだった。この茎っぽさは、翌日残りをデカンタしても消えることはなかったが、おそらくは2,3年の月日を待つならば、消えてくれることだろう。そのころが、このワインの飲み頃と察するが、どうだろうか。


おしまい

 


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