コント・ラフォン(白) | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2001年5月4日 | |||||||||||||||||||||||
<味わい> 濃く、深い黄金色。こんな深みのある黄金は初めての経験である。これが熟成の頂点を極めつつある大名醸の色合いなのだ。貴賓に満ちた非常に裕福な金色である。熟成した白ワイン特有のコルク臭が飛んだ後、そのブーケはマロングラッセを思わせる苦味のある甘い香。プリンの上のカラメルにも似た風合い。こここ、これはすばらしい。幾層にも重なり合った、それはあたかもミルフィーユを気体に変えたような複雑さがある。鼻空に溜まったブーケは心地よく香を感知する細胞を刺激し、その信号を悦びに変換し、この貴重な瞬間を共有させてくれるかのごとく全身の細胞に隈なく伝えてくる。この時点で既に私の肩甲骨が痙攣し、背筋の筋肉が波打ち始めていた。声にならない感動が私を背後から包み込む。うまい。口に含めば香と同じ味がする。堂々たる辛口ワインにして、幾重にも折り重なる甘味を携えている。芳醇にして上品。飲むごとに細胞が刺激される悦びは、目を閉じてもなお一筋の閃光として脳裏に焼き付いてきた。 非常にすばらしい極上の白ワインである。白の金字塔。 コシュ・デュリのムルソーがあふれ出る芳醇とすれば、このコント・ラフォンは折り重なる芳醇。15年もの歳月と共にゆっくりと静かに、深く重なり合った一枚一枚は丁寧に剥がせば、剥がせなくもなさそう。そんな下衆な思い違いを空想するのも悪くない。これは、この白ワインが到達し得る理想郷の域に達しているかもしれない。 白ワインの四大造り手に数えられるコント・ラフォンではあるが、彼の造りだすワインがすべてこの域に達することはないという。この1986のペリエールが特別なのだという。このワインは1986のコント・ラフォンのペリエールとして飲まれるもので、このワインを基準にしてしまうとラフォンは厳しくなる。今回のワインと同じ域に達し得るのは1997年のジュヌブリエールという。出会いを信じて待ってみたいものである。 とにもかくにも今回出会えたこのワインは一生脳裏に焼きついたままだろう。そしてラフォンを追いかけたくなる。されどラフォンは高い。このワインの小売価格も相当なものである。今回は偶然が重なって運良く堪能できたが、もう一度飲むには財力が追いつかない。ワインをとことん知るためには破産する覚悟が必要とのこと。なるほどその気持ちもわからないではないから、少し怖い。アラブの王家に生まれなかったことを少しだけ後悔しつつ、ワインとの出会いに感謝である。 参考 : パーカーズポイント=99点 以上 |