クロード・デュガ
試飲日 2001年5月8日など
場 所    都内某所
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine Claude DUGAT (Gevery-Chambertin)
Vintage 1999
テーマ デュガの好み
ワイン Gevery-Chambertin
 

<味わい>
 ローヌを彷彿とさせる紫色を伴った深いルビー色。デュガ色とても名づけたい特徴ある色合いである。口に含めば濃厚な味わい。甘い香に反して、茎を思わせるような渋みがしぶしぶしているのが気にかかるが、時遅れてやってくるミルキーな甘味が、なんとも奥ゆかしい。辛口に仕上がっているのに、甘味の印象が残る。濃縮感はあるが、やや深みがないかもしれない。第一印象がいいだけにもう少し伸びが欲しいところでもある。
 ブルゴーニュを初めて飲むならこの味からスタートしたい。この印象は、他の産地のワインでは決して味わえないすばらしさがある。ボルドーの銘醸にも負けない個性は、ぜひ試してもらいたいところである。


<クロード・デュガ>
 ロバート・パーカーがその著書で大絶賛する造り手。看板ワインはなんと言っても特級グリヨット・シャンベルタン。1990で99点をとってから大ブレーク。1993で100点満点(パーカー曰く神聖な経験)をとり、その勢いたるやすごいものがある。1995では99点、1996は98-100点をとっている。日本でも入手が困難なワインの代表格であり、インターネットオークションでも破格値がついている。高値の理由はパーカーの高得点連発と極少ない生産量に起因する。グリヨットは100ケース(1200本)しかないという。
 第一印象の衝撃は他者を圧倒し、その感激は瞬く間に飲み手を虜にする。最近のブルゴーニュを語る上で、避けて通れない造り手である。


<好み>
 デュガはすばらしいが、今ひとつ琴線にふれないというか、涙腺に届かないというか、細胞に振動が伝わらない。背筋も軋まない。ワイン専門誌での大絶賛もなんでだろうと首を傾げたくなる。私の経験は1995 97 98 99の四ビンテージしかなく、しかもすべてACジュブレ・シャンベルタンである。村名格しか飲まずして好みを決するのも如何なものか。ただ諸先輩方をして1993のデュガを語るあの熱い思いはうらやましく、その輪に入れない者として地団駄をも踏んでいたりする。その大絶賛の先輩方も最近のデュガには一歩引くという。周囲の大絶賛モードと1990年代のほとんどを実際に飲んでいる先輩方との語り口とは完全に反比例の曲線を描いている。先輩方の浮かばれない表情が、デュガの評価を決定付けているようでもある。しかし自分の舌でも確かめたい。
 デュガは早く飲むべし。これが最近の口癖である。甘い濃縮感は出来たてに強烈なインパクトを放ち、徐々に静かになっていく。甘味が後退し、低温浸漬系の渋みが増してくる。熟成により奥深さが増すのかと思いつつ、さらにあの大絶賛を自分で体験できるのだという固定観念が邪魔をして、意外にあっけない。不思議である。期待が大きいだけに・・・というワインの代表にしてしまうには恐れ多いが、現状はそんな印象である。


<まとめ>
 ブルゴーニュを紹介するなら、まちがいなくこのデュガがお奨めである。特に赤ワインをいろいろ飲んで、なんかあんまりおいしくないなと思っている人には、この濃縮感は衝撃に近いだろう。甘い香とミルクっぽさは女性にも愛される。デュガからブルゴーニュワールドの扉を開くのもいい。事実そうしてブルゴーニュの虜になった人々を私も多く知っている。彼らと飲むワインはいつもおいしいから、ワインはたのしい。
 またデュガの買い方であるが、初対面に近いワイン屋さんで「デュガのグリヨット一本取っといて下さい。あとで取りに行きますから」なんてことは言ってはいけない。このグリヨットを入手するためにどんな努力がなされているか、また幾人もの常連さんが待ち焦がれているか。いろんな思いが錯綜するデュガの看板ワインは、見ず知らずの他人が土足で上がりこんできて頼むようなシロモノではない。都内でも徹夜してでも買えない逸品という事実は真摯に受け止めよう。デュガのそんな一面もワイン好きには面白いエピソードでもある。

以上


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