ドーヴネ
試飲日 2001年5月20日など
場 所    神奈川県内某所   
照 明 白熱灯・蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine d'Auvenay (Meursault)
Vintage 1998
テーマ 超豪華水平ドリンキング
ワイン Meursault Les Narvaux
Meursault 1er Cru Les Gouttes d'Or
Puligny-Montrachet 1er Cru Les Folatieres
 

<レ・ナルボー>
 黄色に近いゴールド。燻した麦藁の充実したアロマは、これぞドーヴネ節である。マロングラッセを思わせる深いマロン香にいぶしたナッツがいつまでも鼻腔をくすぐりつづける。熟した白系果実味もいい。深い、このアロマは深い。複雑にして全開である。開けた瞬間から飲み終えるまで終始一貫した味わいは尊敬に値する。味わいも香と統一感がある。この濃縮感もたまらない。余韻も長く、いつまでもドーヴネの奏でる旋律が耳の奥に聴こえている。下衆な例えが許されるならば、どちらかというと丸顔系で、笑顔がもちろん素敵で、指先の仕草がきれいで、胸元が強調されたあでやかな服を身に纏い、オペラの幕間にシャンパンをいただいているような感じ。余計分かりにくくなったかな。ややもするとケバいと指摘されそうだが、これをふくよかさと表現できれば、思わず笑みもこぼれるというもの。濃密で、オイリーで、香り高く、味わい深い。そのため、おそらく食事には合わない。ある特別な夜のためにこのワインを楽しみたい。そんな夜をいくつも過ごせたら最高だろう。このワインのランクはムルソーの村名畑指定である。なぜだ。ドーヴネに限ってはグランクリュに格上げしようじゃないか。
 ある信頼すべき筋からの情報によれば、このワインの飲み頃のベストは10年後という。飴色の誘惑がそこにあるという。うう。しかし待てない。これは待てないぞ。もし次に巡り会えたら、やっぱりすぐ飲んでしまいたい誘惑にかられる。白ワインを語るとき、ムルソーを語るとき、このワインはいつも話題のヒロインを演じられそうである。
 余談ながら、コシュ・デュリーのACムルソー(キュベ・ナルボー)と比較して、その両者の卓越した存在感を思い知る。両者に甲乙つけられるはずもなく、純粋に同じ畑の同じ年のワインを世界の大醸造家が造ると、こうなるのだという感動がそこにある。感謝である。


<1級グット・ドール>
 黄金のしずくと名づけられたムルソーを代表する畑。これも偉大である。ナルボーとは基調を同じにしつつも、何かを語りかけてくるような繊細さを伴っている。ナルボーが圧倒的な存在感を示すのとは対照的に、グット・ドールはなにか秘めたるものがある。それが何かを探す悦びがこのワインにはある。長熟タイプなのだから今は飲まないでくれと、言葉少なに耳元で囁いてくるような印象でもある。ナルボーよりも1万円高い理由もわからなくもない。ワインの値段のつけられ方に納得もしてしまうところがすごい。


<1級フォラティエール>
 これもドーヴネ節が基調。このハニー香と力強い酸はACピュリニー・モンラッシェの特徴そのものである。すばらしい。畑の個性に醸造家の力量がすごいところで繋がっている。麦藁とハニーが協調しながらお互いの個性を引き立てている。こんなハーモニーはちょっと感じ得ない悦びである。極上の一杯。まだ飲み頃には達するはずもないが、10数年の時を経て再び出会えたならば、途方もない感動に生きる喜びを感じることだろう。10万円で買えるかな。その値段なら安いなと思える立場にいたいこの頃ではある。


<補足>
 ドーヴネはマダムルロワの個人所有のドメーヌである。ブルゴーニュトップ評価のドメーヌ・ルロワと、赤白とも大名醸を造るネゴシアンのメゾン・ルロワと、このドーヴネは世界中のワイン愛好家を魅了し、世界中の食卓に彩られている。ルロワはいつ飲んでもおいしいし、値段どおりの味がする。畑の場所の優劣も年号の良し悪しも、全てを超越して偉大なワインを造りつづけるマダム・ルロワに敬意を表すると共に大感謝である。


以上


目次へ    HOME

Copyright (C) 2001 Yuji Nishikata All Rights Reserved.