ミッシェル・ゴヌー | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2001年6月9日 | |||||||||||||||||||||||
<味わい> いい感じに熟成している。枯れた感じの薄茶色系のルビー色は、目にやさしく気持ちも穏やかにさせてくれる。いわゆる癒し系の落ち着きのある面持ちである。果実香が14年の時を経て、乾いた草に変わったかのような、そんな熟成香はなんとも至福である。口に含めばタンニンがゆっくりと丸まった感触。おいしい。うさぎ料理と合せたが、その取り合わせはほぼ完璧。コルトンの丘で元気に飛び跳ね、時折地面に体をこすり付けていた様子が目に浮かぶ。うさぎの臭みが玉葱の甘味とコルトンのやさしい渋みに消され、おいしいところがライトアップされてくる。ワインが食中酒であることを認識させる凄みもある。料理が引き立ち、ワインのうまみも増す。絶妙のバランスには思わず笑みがこぼれるというもの。ワインと出会えた喜びと、なによりこんなにおいしいうさぎ料理をリーズナブルな価格でサービスする初台の某シェフの力量にただただ脱帽するばかりである。 コルトンに話を戻せば、ゆったりとしたブルゴーニュグラスにサービスされ、しばしの時間が経過した後でも、そのやさしい力は衰えることなく、最後の一滴まで抜群のおいしさを携えていた。古酒ゆえ、行くときは行ってしまう心配は、杞憂に終わった。 ちなみにソテーした無菌豚とも合せてみたが、こちらはワインの酸味が強調されすぎてバランスが悪かった。口の中でワインと料理が別の方向に向かってしまうという印象だ。さらに鶉にカレー風味のご飯を詰めたこの店の定番料理には、その濃い味付けにコルトンがついていけず、物足りなさを感じざるを得なかった。同じ肉料理でもその素材と調理方法によってワインの相性も千差万別である。この違いは結構難儀だ。だからソムリエがいる。ソムリエに下駄を預けて、おいしい料理を楽しむワインをサービスしてもらおう。そしてたとえ相性が合わなくても、それはそれで経験を享受できる懐深さもほしいところである。 個人的な想像によれば、無菌豚にはコート・ド・ニュイの果実味豊かな最近のビンテージが、鶉にはコート・デュ・ローヌのシラーが合いそうである。今度試してみようと思う。 料理の素材と調理方法についてもう少し学んでみたい今日この頃である。せめてその料理の名前くらいは暗記したいものだ。食事を楽しむレストランに合ってメニューを書き写したり写真を撮ったりするのは失礼にあたると思われるので、できるだけメニューを復唱するのだが、酔いに任せて忘れてしまうのはご愛嬌さ。 以上 |