ドミニク・ローラン 1998
試飲日 2001年7月6日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOC特級ワイン
生産者 Dominique Laurant (Nuits St Georges)  
Vintage 1998
テーマ ドミニク・ローランの特級はうまいのか
ワイン Charmes Chambertin
Ruchottes Chambertin

<シャルム・シャンベルタン>
 
薄い茶色がかったルビー色。濁っているような、というと言葉が悪いが、茶色が完全に溶け込んでいないような色合い。この色はなかなか見かけない。口に含めば薄口の食感にもかかわらず、うまみ成分がぐわっと押し寄せてくる。薄いのにうまい。このワインは飲みこんでからが大変おいしい。口から出す息にシャルムシャンベルタンのうまみが溶け込んでいるようで、息をするのがもったいない感じでもある。やさしくふくよかなシャルム・シャンベルタンを地で行くような、すばらしいワインである。ある信頼すべき情報によればジョセフ・ロティから買い求めたワインであるという。
 
 抜栓後一時間すると、このワインの本領が発揮された。乳脂肪分を含んだ高級チョコレートを食べた後に鼻から抜くときの、あの上品な甘さが大変心地よい。ぜひとも時間をかけて一本丸々飲んでみたいが、人気沸騰の話題の造り手だけにその価格はちょっと手が出しにくい。いいワインであるが、価格とのバランスが少し悪いような気もしないでもない。


<リュショット・シャンベルタン>
 抜栓直後はすごい木の香り。黒系の果実を思わせる深い色合いは、前のシャルムとは打って変わって濃いワインである。口に含めばウィスキーかと錯覚するような樽香が鼻につく。非常に強い酒である。微かにチョコレート香を感じたが、これはまさに赤いウィスキーそのものである。新樽200%とはこういうことなのか。樽の香りがワインの果実味を圧倒し非常に角張った印象を感じざるを得ない。INAOでの試飲は厳しい感があるので、大きなグラス(名前が思い出せない。福笑いの顔立ちに似た形・下膨れのいわゆるあれです)に注ぐ。う。まったく違う。キツイ感じがなくなり、まろやかになっている。喉の通りもやさしくなり、グラスの違いがここまでワインの性格を変えるものかと驚きを隠せない。
 
 さらに抜栓1時間後にINAOに注ぐ。ガツンとくるパウダー系の甘い香りが飛び込んできた。すごい。ワインの力強さがようやく表に出てきたのだ。さらに少し経ち、香りが落ち着きを取り戻す頃にはビターチョコの香りを携えていた。味わいにも丸みを感じ、このワインを飲むタイミングの難しさをつくづく実感するところである。
 このワインは誰の畑のものか情報はない。


<まとめ>
 今回のジュブレ・シャンベルタンの特級二本には共通点はなかった。それぞれが大変おいしいワインである。しかし、ドミニク・ローランを特徴付けるような、節のようなものは感じられなかった。たとえばメゾン・ルロワにみられるような醸造家の個性を感じなかった。しいて言えば新樽200%を意識させるが、それは樽の個性であって、ワインのそれとは異なる。その年のいいワインを買い付けるドミニク・ローランの手法は、おいしいワイン造りには最適かもしれないが、造り手の個性を感じさせないことで、ワインに物足りなさを感じざるを得ない。これは単に好みの問題だけだろうか。
 新星ドミニク・ローランはラルー・ビーズ・ルロワを超えられるか、超えたのか。まだそんな議論をする時期ではないと個人的には思っている。

 ただドミニク・ローランのワインはブルゴーニュを知る者にとって憧れの一本には違いない。マスメディアに取り上げられることも多く、さらにワイン自体のおいしさにより人をひきつける魅力は十二分に持っている。ネゴシアンの最高ランクにあり、ドメーヌ・クロード・デュガとともに日本で最も人気のある造り手である。値段も高く、話題性に事欠かないが、信仰にも似た視線をもつワイン愛好家とは、一線を画したい心境でもある。
 
 今夜は少し辛口なレポートになってしまいました。
 おいしいんだけどね・・・という感じです。


以上
 


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