ヴァンサン・ダンサー
試飲日 2001年7月15日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOC一級白ワイン
生産者 Domaine Vincent DANCER (Chassagne-Montrachet)  
Vintage 1998
テーマ スーパースターに一番近い男
ワイン Meursault Perrieres

<ムルソー・ペリエール 1er Cru>
 
結論から言えば、このワインはすばらしい。偉大なブルゴーニュである。
 やさしく黄金色に輝くところはムルソーらしくないともいえるが、注がれたばかりのグラスから飛び込んできたファースト・インプレッションは燻したヘーゼルナッツそのものだ。これはすごい。濃いとろみ感が輝く金にあいまって飲む前から気持ちが高揚してくる。しかし、そんな強烈な印象はあっという間に通りすぎ、しばらくは平静を装ってしまった。
 一度閉じてしまったかのようである。しばらくは時の流れに身を任かそう。

 ようやく柑橘系の香りがにじみ出てきた。高級果物の皮を数種類混ぜ合わせたような香りである。INAOグラスにようやく染み出してくるアロマはなんとも心地よい。グラスをぐるぐる回してしまっては決して現われない香りだろう。じわりじわりそのやさしい印象が、である。さらにシロップ漬けにした果物も加わり、味わいはまさにトロピカリーである。下司な言い方が許されるなら、子供の頃のあのライオンマークのフルーツ味の歯磨き粉。歯磨き粉なのに、なんだか甘いあの柑橘を思い出させる。懐かしいぞ。
 
 しっかりした酸と深みのある飲み応えが体を揺さぶってくる。しかしこれはムルソーではなく、シャサーニュ・モンラシェの特徴だ。これをムルソー・ペリエールとして飲むとムルソー飲みには意表をつかれるかもしれない。極上のムルソーはとろとろした黄色に近い黄金色に燻し香が加わるからだ。このダンサーのペリエールは第一印象こそ、そのインパクトを与えてくるが、グラスに注がれて落ち着く頃からは、典型的な極上のシャサーニュを彷彿させる。とにもかくにも大変おいしいワインには違いない。

 飲むほどに、酔うほどにおいしくなるワイン。時間とともにしっかりした酸に丸みが加わり甘い飲み応えになってくる。おいしい。これはうまい。もう一本欲しい。否、ケースで欲しい。長熟タイプにして、この瞬間にも楽しめる。数年を通してこのワインの変遷に付き合いたい。何かいいことがあった夜、このワインと共にその悦びを分かち合いたい。感謝である。


<ヴァンサン・ダンサー>
 1998年が初ビンテージの新進気鋭のドメーヌである。1996年まではルロワとルイ・ジャドに樽を売っていた実力派。このドメーヌの文献は乏しく、ほかにどんなワインを造っているのか不明である。シャサーニュ・モンラシェ村に本拠地を置き、この村を代表するドメーヌ・ラモネやミッシェル・ニーロンの座を狙えるドメーヌであることは間違いない。いまでこそ某所でしか見かけないが、今後都内でも見かけることも多くなるだろう。恐らく徹夜組みが出る可能性すら想像に難くない。店頭で見かけたら即買いだ。


以上
 


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