ワインはたのしい。けれど、ワインは飲んでしまったら思い出しか残らない。そんな儚くも楽しいワインの思い出に、多くのワイン愛好家はビンそのものを飾ったり、エチケットをはがして額に入れたりする。私もその一人で、自宅には空き瓶がごろごろしていて、机の引き出しには剥がしたエチケットの山が築かれたりしている。ビンは結構邪魔になる。数本までならあの夜の出来事を思い出しつつ、ビンに見とれて過ごせるが、こうも沢山集まると結構厄介だ。家族への心象も悪く、1本当たりの値段がばれようものならかなりのヒンシュクは免れないだろう。そこで、ある日一念発起して、お気に入りの数本以外は全部処分することにした。エチケットだけ残してアルバムにまとめれば一気にコンパクトになる。最近ではスキャナーにとりこんでパソコンで管理も可能なのだから、そろそろ重い腰をあげようではないか。
人は、ワインのエチケットをどう剥がしているのだろう。従来型の糊で貼ったタイプなら水につけておけばふやけて剥がれやすいが、最近のシール式のものはお湯につけてもなかなか剥がれないので苦労する。剥がしにくいがために、ついついボトルのままキープして、ご覧のありさまになった次第だ。
世の中には便利なものが売っている。ラベルコレクター何とかという、エチケットの表面をシールで剥がし、台紙に貼って保管できるやつだ。10枚入りで750円から1000円程度で売っているので、ワイン屋さんやネットなどで取り寄せ可能だ。余談ながら初台の某フレンチレストランでは、帰りがけに今宵飲んだワインのエチケットを専用の台紙に貼って手渡してくれる。そんな気遣いもこの店の人気の秘密だろう。
ただしこのシールにも弱点がある。これは数枚の層で構成されているエチケットの表面の一枚だけを剥がす方式なので、エチケットを完全に100%剥がすことはできない。しかもシールへの押し付けが弱いと、エチケットはところどころ薄い表面しか剥がせず、微妙に見た目が悪い。さらに皺が寄ったり、ビンに糊の部分が残ったりと、不満も多く募ったりする。100%剥がれないことを嫌う人もいるが、足の踏み場に困るほどのビンの山を見渡せば、多少は目をつぶらざるを得なかったりする。
前置きが長くなったが、このシールはビンに貼りつけてエチケットごと剥がすのだが、これが結構面倒くさい。表面が完全にシールと一体化しないと剥がれないので、下手をすると取り残しできて、薄汚いエチケットになりかねない。貴重なワインの思いでなので、綺麗に剥がしたい。特にブルゴーニュワインは稀少なため、二度と手に入らない可能性が高く、失敗は許されないのだ。
人は何を使ってシールをくっつけているのだろうか。今まではマジックやボールペンのの握り部分を擦りつけたり、手でごしごし擦ったりしていた。シールがぴたりとくっつくまで何分もかけてごしごし擦ったものだった。そんな姿は結構情けなさがにじみ出てくる。他人には見せたくないシーンのひとつにあげられるだろう。しかし某日、私はあるひとつの発見をした。本当は誰にも教えたくない気持ちが十二分にあるものの、日頃の感謝を込めてここで一気に紹介しよう。人間、ひとつ寛大な気持ちが大切だ。
スバリ、コルクを使ってシールを擦りつけるのだ。コルクは弾力性に富んでいて、強く押しつけなくとも丸みを帯びたビンにフィットする。たとえば右端からスタートして、ごしごし擦って左端で折り返し、右端に戻る。これで終わり。一往復で簡単にシールがエチケットにくっついてしまう。剥がす直前に、エチケットの端をきちっと一回擦った後に、恐る恐る引き剥がすと、あれよあれよという間に剥がれるではないか。超簡単。コルクはボトル1本に必ず1個ついてくるので、飲み終わったらすぐさまシールをセットして、軽くごしごし。ああ。ものの数十秒で一丁挙りだ。
なんて簡単なんだ。ぜひお試しあれだ。
そんなの知っているという人がいたら、ほんとすんませんだが・・・。
おしまい
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