傷んでたワイン  2003/01/25
 ワインを持ち寄ってのワイン会は楽しい。しかし、そんな楽しいワイン会もワインが健全な状態であればこそだろう。先日、某所で某氏が持ち込んだワインに劣化ワインがあった。今をときめくシャサーニュ・モンラッシェ村のホープ ドメーヌ・ヴァンサン・ダンセールVincent DANCERの看板ワインのひとつ ムルソー・1級ペリエール2000だった。白ワインなのに赤みを帯びた色合いは、飲む前から疑問符が点灯し、アロマは閉じているというよりメリコンデイルという表現がマッチするほどだ。味わいは無味。アルコールを水で割ったような味しかしなかった。これは低温劣化による不良だろうと推測され、グラスはあっという間に回収されてしまった。

 2000年という最新ビンテージにして、偉大な年の評判の造り手のワインが、非常に残念な結果になっていた。
 
 ここでひとつの疑問が生じた。この状況を店主に伝えるべきかどうかだ。ちなみにこの店のワインは当「WINE DRINKING REPORT」には登場していない。まず第一の問題点として、私がこのワインを買ったわけではないという事実がある。自分で買いもしなかったワインにケチをつけるのも気がひける。第二に、しかし私もこの店には数回訪れたことがあるという点だ。ワインこそ2本しか買ったことはなく(それは痛んではいなかったが)、日本酒もお土産用に一回買っただけの、ほぼいちげんサン状態ではあるが、店員とも話をしたことがあり、店に残る同一銘柄のワインの行方も気になるところだ。そして最後の問題点として、この不具合ワインはすでに回収され、ステンレスの流し台を通過しているということだ。ワインはすでになくなっているのだ。

 こういう状況で、店主にワインの劣化を伝えるべきなのだろうか。平穏無事に営業されている店に波風立てるのもどうかと思う。そもそも自分ではこれを機にこの店でワインを買う予定はなくなったので、このまま何事もなかったかのように過ごすべきなのだろうか。同一銘柄のワインでも、他のボトルが傷んでいるという保証もない。そして一般的には私は、その店に苦情を言える立場にない。

 ただワインから感動を与えてもらっている身として、傷んだワインを見過ごすことも出来ない。
 どうしたものかと思いつつ、日々、時は流れ行く・・・。
 その店周辺にも用事がなく、ふらりと立ち寄るには気持ち遠い。

 ちなみにそのワインを買った某氏は、やっちまったという表情をしていたが、特に店に対してアクションは起こしていないようだ。というよりも忙しすぎてそんな時間はないのかもしれない。来週から中国大陸に上陸する某氏に幸あれである。結論としては、某氏から忠告してもらうのが筋だと思うが、本人にその意思はなさそうなので、特に身動きをとれずにいたりもする。そんなわけで今の私に出来ることは、当時数本あった同じ銘柄のワインの無事を祈るだけだったりする。ワインの難しさを考えつつ。。。


おしまい



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