2003年ブルゴーニュ気候 2003/10/24
2003年のブルゴーニュ地方の気象状況を少しまとめてみよう。すでに各誌で報じられている通り、2003年は驚異的な酷暑を体験し、前代未聞というか、気象台はじまって以来というか、凄い年になったようである。これはブルゴーニュだけにとどまらず、フランス全土、ヨーロッパ全土に及ぼす異常気象だったようである。
時期 出来事 3月まで 例年通りの穏やかな気候 4/11 寒波が襲い、ジュブレ・シャンベルタンでは積雪を観測。
シャブリでは-7℃ ムルソーでも-5℃まで気温が下がり、新芽に影響が出る6-8月 この3ヶ月間で30℃以上の日は60日を超える。2月から8月までの降雨量は例年比15-45%減。 6/13 ブズロンとシャサーニュ、ピュリニーなどで局地的に雹が降り、葡萄の木にダメージが出る 7/10 ボーヌで葡萄の色づきが確認される 8/12 シャブリで41.7℃を記録。ボーヌでも39.8℃。 8/13 酷暑の中ブルゴーニュでも収穫開始 (歴史上驚異的な早さ) 8/19 マコネ地区では酷暑を避けるため、真夜中午前3時未明に収穫。 9/10 シャブリ地区があるヨンヌ県での収穫がブルゴーニュでの最後の収穫
表を見るまでもなく今年は凄い年である。観測史上、例を見ない酷暑と少ない降雨量により、収穫も8月中旬に開始される年になり(例年よりも1ヶ月も前倒しされた)、収穫量も半減しているようである。(資料により数値が違う)。春先の冷害や初夏の雹害によるダメージも局地的に発生していて、ワイン生産者も今までに体験したことがないビンテージとなったようである。一般的には、十分な糖度を確保しているものの酸の不足は否定できないようで、フランス醸造家連盟会長アラン・ゲダ氏をしてデリケートな年と言わしめるビンテージとなった。
この状況をブルゴーニュ魂的にはどう見るべきか。ふと思えば今年ほど天候に振り回された年はなく、例年以上に畑仕事に精を出し、局地的な異常気象にも配慮し、8月のバカンスも返上して、まさしく農作業に明け暮れたのではないかと推測される。しかも生産量は半減しているので、前年と同じ価格で取引されるなら、収入は半分になってしまう年なのである。今年ほど生産者の苦労がワインに現われる年もなさそうである。2年後2003年ビンテージが市場に出る頃、私は今年の天候を振り返りつつ、彼らの表情を思い浮かべることだろうし、そういう飲み方をしなければお天道様に申し訳も立たないってもんである。
2003年のワインの評価がどうなるかは現時点では分からない。生産者によってワインの品質はピンきりになるという説もある。異常気象にめげず畑の手入れに如何によっても違いは顕著だろうし、夜中に収穫をした生産者までいるように、その努力が報われるかもしれないし、報われないかもしれないビンテージである。いずれにしても2003年をして、グレートビンテージなのかバッドビンテージなのかとひとくくりに評価するのではなく、特異稀なるビンテージとして、そのワインの飲み方を研究、実践すべきと思う。生産者によっても、畑の場所や向きによっても、味わいは変わるのだろうから、しっかりとおいしい飲み方を探したくなる。今年は旨い不味いで判断できるような年ではなく、生産者の苦楽を共にできるような年にしたいと、ブルゴーニュ魂は思う。すべてはおいしく飲むために。農作物である葡萄を原料とするワインの悲喜交々をグラスの中で味わいたいと思うこの頃である。それには生産者の生の声が必要である。
さて、そろそろ・・・。
参考資料 「Bourgogne Aujourd'hui」とフランス食品振興会発行メールマガジン
おしまい