ワインが泣いていますシリーズを数回・・・。
日本の夏は暑いと相場が決まっていて、特に今年は昨年と違い猛暑の域に達しており、関東地方では連続30何日以上、30℃超を記録しているとのニュースも報じられているこの頃である。そんな状況下で、ふと思うことがある。それは、某レストランのワインの温度である。
日本のどこかにある某レストランではコスト重視の経営を展開しているようで、店内にはワインセラーがひとつしかなく、納まりきらないワインは空調設備のある店内にてオブジェとして飾られ、オーダーが入ると氷を張ったワインクーラーにて飲料に耐える温度に調整した後でサービスされていた。オブジェは見た目にはたいそう美しく、一見よさげにも映るが、そこは夏場の暑さに耐えうる場所かと問われれば、疑問符が点灯しまくるのである。一応営業時間中はクーラーが効いているらしいが、(閉店後はどうなのかなあ)、手元の温度計に寄れば、(普段、携帯温度計を持ち歩いています・・・)、室温は20℃代の後半を示していた。(客の往来が多く、扉の開閉回数が多いために、外気に触れる時間が多いためのようだ。)そして予想通りというには忍びなさも募るが、そのオブジェとして飾られたワインのいくつかには、吹き零れた痕もあるようだった。
私からの温度管理の質問を受け、店主は言葉を濁した。しかしその表情からは、「本当は全品ワインセラーに収納したいが、社長の経費削減の指示には逆らえず、とりあえず温度管理はしているので、ワインは大丈夫ですよ」と感じ取れ、ただひたすらに夏が過ぎ去るのを待っているかのような、そんな感じの(雇われ)店主なのであった。この(雇われ)店主はワインの管理に不行き届きがあることを知りつつ、お客様にワインをサービスしている。それってありだろうか。この(雇われ)店主は、フランスでワインの研修を受けたこともあると聞く。一体、何を研修してきたのだろう。
温度管理が意図的に不十分なワインを正々堂々と小売の何倍かの価格をとってサービスする姿に、私は「嘘」を感じざるを得なかった。本当はワインセラーを導入して、美味しいワインの提供を実現したいのだろうが、経営の現実として、それを遮るパワーに負けてしまっている。ワインの多少の高温劣化は、それをプロフェッショナルに指摘されない限り気付かれないケースも多く、どうやらそれを悪用しているのだろうか。そこにワインに対する「嘘」がある。そもそもは美味しいワインをサービスするためにこのレストランの店主を務めているはずなのに、美味しいワインの魅力を伝えたいと思っていたはずなのに、現実には管理怠慢のワインを、売りさばくことに主眼が置かれてしまっているのだ。寂しい限りである。
いずれにしても・・・、ワインが泣いています。
まじめな生産者から、誠意のある物流業者を経て手元に到着したワインは、当然のこととして、適切な温度で管理され、最適な温度でサービスされなければ、ハッピーな食空間は生まれるはずもない。この某店がレストランの例外であって欲しいと願わずにはいられない。
そもそも日本の夏の暑さに猛然と戦うべく温度管理に情熱を注いでいるレストランや酒屋さんもあれば、某店のようにお洒落な空間に視線を奪わせつつ、ワインの愛情に対して平気で嘘をつく店もある。その嘘は必ず見破られると信じ、そして消費者として為すべきは、レストラン側のワインに対する愛情を見極める力の鍛錬だと思われる。某店の名はここで明らかにしないが、近い将来商店街マップからその店名が消えていることを願うばかりだ。(多分なくなると思う・・・)
そういえば、私の行きつけのお店は、「嘘」をつかないお店ばかりで、とてもうれしいなあ。
おしまい
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