自然派の逆襲 その3  にしかたゆうじ
 ずいぶん前に、自然派の逆襲というタイトルで2つほどコラムを書いたが、今回はその番外編を。

 じつは、先日都内某所で自然派ワインに力を入れているレストランで、とても大切な人たちと夕食を共にする機会に恵まれた。都内の具体的にどこかを特定したい衝動に駆られつつ、これから展開する内容ではお店の営業妨害にもなりそうで、むにゃむにゃむにゃで、あはは、なのである。

 そのレストランは、雑誌でも見かけたことがあるお店で、一度は訪れてみたいお店だった。ワインはいわゆる自然派ワインが充実していて、なかなか面白そうなワインリストを持っていた。料理はアラカルトでの注文はできず、すべてプリフィクス制で、しかたなく3500円(だったかな)の前菜とメインのコースをお願いしたのだった。

 しかし。

 ここの料理は、かつてないほど個性的な味わいで、平たく言えば東京で死ぬほど不味いレストランはどこかと訊ねられれば、ここですと即答しそうな勢いで、味も素っ気も工夫もない驚異的な味わいだった。どうしたらこんなに不味い料理が作れるのだろう。新たなる疑問が浮かび上がりつつ、塩加減がまるでなっていない切っただけのハムとゴムのような堅い鴨料理にこれ以上フォークを当てることは出なかったのだ。確かワインはいい感じではあったが、滅多にあうことも適わない大切な方との夕食が、ゲロゲロにおいしくなく、ハッピーレストランでなかったことに対する失望は、今後の食生活に遺恨を残しそうである。

 また別の自然派ワインを売りにしているお店では、なぜか化学調味料の味わいが鮮明で、ワインが自然のままに造られているのに、なぜに料理は精製されたグルタミン酸ナトリウムまみれなんだろうと、大いなる疑問が浮かび上がったのだった。

 またパリ某所で自然派ワインが充実しているビストロ(?)というか立派なワインバー(?)の料理も、オープン当初はおいしかったが、今では見る影もなく、むにゃむにゃむにゃと言わざるを得なかったりもする。パリよ、おまえもか。(というよりもパリの大半は高い割りにおいしくないかも)

 えてして、自然派ワインに力を入れているレストランというものは、おいしくないのだろうか。自然派ワインに対する情熱や愛情を、その数パーセントでもお料理のほうに向けてもらえると、自然派ワインはますます定着するのにと思ったりする。自然派ワインの逆襲・・・番外編。それは自然派にこだわりすぎたゆえに、料理が死ぬぼと不味くても平気でいられるレストランが存在するということだろう。

 もちろん自然派ワインに力を入れて、なおかつおいしい料理が食べられるお店はたくさんあると思う。茅ヶ崎某所のフレンチはその代表格だろうし、うちは違うよというメールも頂戴することだろう。しかし、現状では自然派ワインが充実しているレストランは、自然派ワインを楽しむだけのお店になっているような気がしてならないのは、私だけだろうか。普通においしいレストランで、自然派ワインが普通に楽しめる日が来ることを願いつつ、冒頭のレストランがあまりにも不味かったので(←再訪はかなりの勇気を有するぞ)、ここに記した次第である。


おしまい


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