昨夜、渋谷の某レストランでシャンパーニュの比較試飲を実施した。集めたワインは、ピノ・ムニエ100%で造られたシャンパーニュで下記の通り。
エグリ・ウリエ シャンパーニュ ブリュット・ラ・ヴィーニュ・ド・ヴリニ
フランソワーズ・ベデル シャンパーニュ ブリュット・アントル・シエル・エ・テール
ジェローム・プレヴォ シャンパーニュ・エクストラ・ブリュット ラ・クローズリ・レ・ベギーヌ
ジャック・セロス シャンパーニュ・ブリュット (ただしシャルドネ100%)
ピノ・ムニエといえば、三つのぶどう品種の栽培が許されているシャンパーニュにおいて、シャルドネとピノノワールの陰に隠れた補助品種的な印象を持つことが多く、一段下がった見方をされがちな品種である。しかし天下のクリュグ社のシャンパーニュには、このピノ・ムニエは混醸され、シャルドネやピノ・ノワールにはない個性が認められているのも事実である。今回は、そんな微妙な品種のピノ・ムニエだけを用いて造られたシャンパーニュを飲み比べることによって、品種の個性や造り手の特徴を味わおうというもの。加えて、プレヴォの師匠格のジャック・セロスのシャルドネと比べることで、その個性を確認しようという企画だった。
その結果は、三者三様のおいしさが楽しく、ピノムニエ100%というワールドのすばらしさを体感するこことなった。エグリ・ウリエのそれは、三者の中で、最も軽いタッチで、まさに食前酒としての役割を果たし、夏に飲みたいシャンパーニュの筆頭格。華やかさの中に、充実した質感を醸し出し、かなり好みの味わい。ベデルのそれは、最近のお気に入りとして1ケース以上口にする機会に恵まれつつ、今宵もいい感じ。バランスがよく、時間と共に変化する様は、ピノ・ムニエの底力を垣間見ることができる。華やかさと質感、そのバランスがすばらしい。プレヴォは、もっとも個性的で重いタイプ。酸化傾向の色合いと味わいは、焼いたトーストよろしく香ばしい。ただ個性的ゆえに通好みの味わいかもしれない。また後に飲んだ、セロスのシャルドネとの共通間が多く、彼らの師弟は、品種の個性よりも造り手の個性のほうが優先しているような印象も受け、プレヴォとセロスを同時に飲むことによって、彼らの共通項と、品種の個性の微妙な違いを楽しむことは、シャンパーニュを理解するうえで、とても貴重な体験となった。
価格は上から順に高くなっていき、それに比例するようにワインとしての重さも、コクも出てくるので、三者の違いを単純に価格で割り切るならば、なるほどと思えなくもなく、同じピノ・ムニエにして、それぞれの個性が豊かであるので、造り手の哲学の尊重が、ワイン選びの目安になることは間違いがないようである。造り手を知り、ワインを知る。まさにそれは農業そのものであろう。
ただ残念なこともある。もう手に入らないのである。ここにレコルタン・マニュピュランの性があり、出会ったときに買っておかなければ、飲むことは難しく、今回のように三者を比較する作業が、次回いつできるのか微妙なところが辛かったりもする。
夏はシャンパーニュがおいしいなあ。特にピノ・ムニエが火照った身体を癒してくれる。黒ぶどうから造られる黄色みがかった透明な泡のある白ワイン。その不思議な魅力に、ますます嵌っていく。今宵もどこかで、ピノ・ムニエのある食卓の風景が展開されているとしたら、それはちょっとうれしいことである。
おしまい
ご意見・ご感想は、こちらまでお願いします。
無断転載お断り |
Copyright (C) 2005 Yuji Nishikata All Rights Reserved. |
|