2005年 印象に残ったワイン 巨艦編  にしかたゆうじ
 今年も残り僅か(というほどでもないですが)になり、巷では今年を総括するイベントなども盛りだくさんになってきたので、当サイトでも今年印象に残ったワインをカテゴリー別に振り返ってみようと思う。分母のワインは相当数あり、その記録を捲るだけでも気合がいるので、ここはざっくばらんに思い出した順で行こうと思う。

【巨艦ワイン編】

 いわゆるワインの頂点に君臨すると思われるワインとの出会いも多数あり、ただこれを書くと微妙な突っ込みも入りそうだが、まあそれはそれとして・・・。(思い出した順に)

 1970 ロマネ・コンティ DRC
  しかし、すばらしかった。究極の球体は、そこにしっかりと存在したが、実は飲み込んだあとの世界観のほうが印象に残り、「ここにないもの」に対する美を官能的に体感させていただいた。このワインをもって、ロブマイヤーの購入を決意させた逸品とも言える。


 1983 リッシュブール アンリ・ジャイエ
 ロブマイヤーをして最高に表現されたピノ・ノワールの世界観。美しいものは、美しいもので味わわなければならないと痛感した逸品。某氏をして、「張り詰めた世界」と表現されたことに同感し、ここにピノ・ノワールの究極の感性(または完成)を見た思いがした。うつくしい。


 1970 グラン・エシェゾー DRC
 ロブマイヤーをして最高に表現されたピノ・ノワールの世界観は、1970のグラン・エシェゾーにも宿っていた。特に和食とのマリアージュを体感するにいたり、ロマネ・コンティよりやや小ぶりと思うのは、自分の先入観の現われであろう。余談ながらコルクがスポッと落ちて、かなり焦った思い出と、そのときの肩の凝りが今も忘れられない。


 2003 リッシュブール アンヌ・グロ
 このワインに関しては、自分が飲んだ印象よりも、ご一緒した方々の時が止まったかのような表情が忘れられない。同じくグロの特級クロ・ド・ヴージョの次にサービスしつつも、その歴然とした差に驚愕しつつ、グラスの中に吸い込まれるような感覚に緊張感を覚え、2003年という酷暑の年のリッシュブールの斜面の奇跡を体感してしまった。(ただし飲み方は結構難しかった・・・)


 2002 クロ・ド・タール モメサン
 このクロ・ド・タールは一年を通じて数回で会う機会に恵まれ、そのたびにそのポテンシャルの高さに心躍ったりした。とくにモレ・サン・ドニ村の他の特級ワインとの比較の会では、圧倒的な存在感を見せ、また他の村の同等のワインと比べてもまた、その個性を引き立てて、単独で飲んでも、うっと唸らせる何かを持っていた。熟成の姿もきっと凄いに違いないが、今も凄いことになっている。(ただし飲み方に一工夫必要かも)


  1990 ニュイ・ミュルジュ メオ・カミュゼ (コンサルタント=アンリ・ジャイエ)
 ロブマイヤーをして最高に表現されたピノ・ノワールの世界観を確信した逸品。偉大なブルゴーニュは、泉鏡花の小説に似て、ありえない設定の中に、静まり返った美しさ、究極の美を意識したりする。余計な解説はすべて省略して、ワインをただ飲むだけでそのワールドに突入できるから凄い。


 2002 シャンベルタン トラペ
 薄いお味の中に、ものすごい情報量を発見した逸品。ややもすれば、軽かろうで終わりかねないその薄さに戸惑いながら、このアペラシオンがロマネ・コンティと同格に扱われてしかるべきと思わせる。和の道にも通じるお出汁の世界観。すばらしい。そしてジュブレのヒエラルキーを体感するのもまた一興だろう。


 1992 ヴォーヌ・ロマネ1級クロパラントー アンリ・ジャイエ
 ロワールの奇才ドメーヌ・ディディエ・ダグノーにご馳走になった逸品は、とにかくその場が寒く、このワインで暖を取るという離れ業をやらせてもらったことで印象に残る。あの日は何であんなに寒かったのだろう。7月のある雨の日の午後のできことだった・・・。


 1964 リッシュブール DRC
 今年のお正月5日に某氏らと楽しんだ逸品。あれから一年が経とうしているんですね。あのときのシチュエーションがこのワインの味わいの記憶と共に鮮やかに蘇ってくる。そしてまたこのときも寒くて、ワインの温度にしっくはっくしたりしたものである。


  1990 シャンパーニュ キュベ S サロン
 1990年のシャンパーニュは、当たれば驚異的な味わいを醸し出し、それはモンラッシェをして跪かせるほどのパワーを持っているが、このサロンがまさにそれ。芳醇で濃厚で、しかしエレガントな味わいは、シャンパーニュというワイン産地を絶賛したくなるほど。


  1990 シャンパーニュ ジャック・セロス
 1990年のシャンパーニュは、当たれば驚異的な味わいを醸し出し、それはモンラッシェをして跪かせるほどのパワーを持っているが、このセロスの傑作は、シャンパーニュとしてではなく、白ワインとして完成された領域に達し、それはデカンタージュをしてセロス特有のシェリー香を飛ばした後にやってくるから不思議である。


  1990 シャンパーニュ シュブスタンス ジャック・セロス
 セロスのシャンパーニュをデカンタージュするのは、ソレラシステムが採用されたシュブスタンスも同様で、南のコルトンシャルルマーニュを彷彿とさせるリッチな味わいと、美しすぎる液面の黄金が、心から離れない。ビオディナミ農法の正当性をここに垣間見る時、どうやっても否定できない何かを意識したりする。


  2003 プイイ・フュメ キュベ アステロイド デディエ・ダグノー
 ロワールの力強さを確信した逸品は、ダグノー自らのお酌により試飲した。このワインは蔵出し価格が450ユーロ(=約63,000円)という破格値がつけられていて、接木のない自根のソービニョン・ブランから造られた逸品で、ダグノー家の人々共に震える手で温めながら試飲した。とてもうまかった。ミネラルたっぷりで、このワインを愛しているを連発したダグノーの荒々しさの外観とは裏腹の表情に、心がドキドキした。(ピノ・ノワール バージョンも傑作)


  1989 モンラッシェ DRC
 DRCのモンラッシェを、グラスの違いによる味わいの差の実験台にするという豪快さが印象的で、リーデル・ソムリエシリーズ・モンラッシェグラスにその軍配を上げつつ、時点はロブマイヤー・バレリーナ・ブルゴーニュで、最後は同じくバレリーナのグラスVだった。


こうして振り返ると、シャルドネはあまり印象に残らず、(一時期シャルドネから離れていたりしたし・・・)、ワインの多くにはアンリ・ジャイエの顔と影が見え隠れしたりする。ことしは、アンリ・ジャイエとの出会いが多数あり、人々を魅了するその味わいに、十二分に納得の一年だったような気がする。来年はどんなワインとの出会いが待ってくれているのだろうか。楽しみは続くのである。


 つづく (自然派編と日本編とコストパフォーマンス編へ)



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