農地法の転換に期待  にしかたゆうじ 2007/08/24

 今日の毎日新聞に、とても興味深い記事が載っています。

 <農地法>農水省が原則転換「自作農」から「利用農」へ

 新聞によれば、農林水産省は、戦後の農地制度の基本理念である「自作農主義」を変更して、農地を「所有」することよりも、賃貸借などによる「利用」を重視する方向で、法改正の準備に入ったと伝えています。これによって、大規模農家などに農地が集まりやすいようになるとのこと。

 これは、実に興味深いですね。

 今日の日本のワイナリーの多くは、現行法の欲するところにより、自社畑を持てないようです。特区申請や、関連会社として農業法人を設立し、実質的に所有するケースはありますが、その多くはネゴシアン的な形態になっているようです。ワイナリーの自社畑といわれているものの多くは、厳密に言えば、経営者個人所有の畑であり、個人所有の畑から収穫された葡萄を、自社ワイナリーに売る形をとっていて、個人としての農業と、ワイナリーとしてのワイン醸造は、法的に分けられているようです。これは原則として株式会社が農地を持てない事によるものです。

 今回の農地法の改正案は、日本のワイナリーが自社畑を持つ(賃貸として)ことができる道が、拓かれようとしていると読んで、いいのでしょうか。次の国会に俄然注目したいところです。

 また記事では、農地相続による特例の弊害も指摘しています。農地を相続した者が、引き続き20年農業を続ければ相続税が猶予される特典についてです。この特典は、農地を賃貸に回してしまうと解除され、多額の相続税と利息の支払いが発生してしまいます。なぜ山梨に放棄された農地がたくさんあるのか。農業を志す人たちは少なくないのに(自分調べ)、なぜ農地は放棄されてしまったのかの答えがここにありました。人に貸すと相続税の納税が発生するから、貸さずに放置する道をとらざるを得ないのでしょう。今回の方針転換で、この特典が賃貸契約によって失われることがなくなれば、日本の農地は再活性されるのでしょう。食料の自給率が40%を切った日本の打開策に、「利用農の展開」は大きな武器になるのでしょうか。

 新聞を斜めに読んでいる段階にして、詳細については理解していませんが、この方針転換が日本ワインの大いなる前進に繋がることを願わずにはいられません。グラスの中には決して現れることがない、そんな事情に、どこぞの誰それのテイスティングコメントの数万倍も興味があるこの頃だったりします。農業としての日本ワイン。興味深く、見つめていきたいと思います。


おしまい


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