先日、都内の有名レストランのシェフ・ソムリエと会話していたときのこと。
ソムリエ某氏曰く、「最近、うちのお店にもロブマイヤーを持ち込まれるお客様がいらっしゃるのですが」
「おおお。ロブマイヤー・・・最近売れてますからね」と私。
「で、そのグラスが白く濁っているんですよ。あれって何ですか」
そのソムリエ某氏の素朴な質問に、私はあっけなく答えてしまった。
「あっそれ、汚れですね。水垢です。ロブマイヤーが白く汚れていると、極めて寂しいです」
「やっぱり・・・」
「そのグラスってボウルのそこの部分、脚とのつなぎ目部分が赤くなってないですか」
「あっなってる。なってる。」
「それも汚れですね。私、ロブマイヤーが赤く汚れていると、極めて寂しいです」
「あれって何ですか」
「ワインの残滓ですね。ロブマイヤーは職人が作っているので一個一個、形が違うんですが、ごくまれに、つなぎめ部分が、すくっと凹んでいるものがあり、そこに赤ワインの残滓が溜まりやすくなっています。あの部分に赤ワインが残ってしまうと、普通に拭いたくらいでは、とれないんです」
「なるほど」
ソムリエ某氏との寂しい会話(=ロブマイヤーが汚れている)は、暗いモードになりがちで、極めて残念な類の話だったりします。ロブマイヤーは、うつくしく。その一線だけは、譲れないかもです。
で、ありったけの化学知識を導入して、ここで少しばかり解説すると、白い汚れは、洗浄用に用いた水道水の自然乾燥が原因で、その正体はケイ酸塩、マグネシウム、カルシウムの結晶のようです。一度付着してしまったら、グラスを磨いただけでは落とせず、とある化学反応に頼るしか手立てはないようです(その化学反応については、メールにてご案内しています。お気軽にぜひ)。そうならないように、水道水の自然乾燥だけは避けたいところですね。ただ、最新の注意を払っても、どうしてもうっすらと濁ってしまうことがあり、それはもう辛いところです。
また赤い汚れは、赤ワインの色素が取りきれていないためで、凹んだ部分を湿らせて、丁寧にふき取ることで解決します。このとき、ガラス拭きでは届かないので、綿棒で拭きとるか、ティシュをボウルの部分に落とし、菜箸などで、ほじくるように拭くことが必要です。あまり力を入れすぎると、ガラス本体が割れてしまうので、最新の注意が必要ですが・・・。
いずれにしても、ロブマイヤーが白く、また時に、赤く濁っているときほど、悲しいことはなく、自宅で楽しむならいざ知らず、レストランにグラスを持ち込むときは、美しいロブマイヤーにてお願いしたいところであります。
ロブマイヤーよ、常に、うつくしくあれ。
おしまい
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