下関を巡る冒険 (2003/06/05)

 
 最近は滅多に書かなくなったが、昔は日本地図をノートに書くのが好きだった。海岸線を模写したり、丸みを帯びた形にデフォルメしたり、ドットを塗りつぶすような角ばった地図を書いてみたりと、とにかく日本地図や世界地図を書くのが好きだった。特に北海道と青森県あたりの地形は今でもソラで書けたりする。しかし今更ながら、それらの地図の多くが間違っていたかもしれないという後悔の念が浮上してきた。

 山口県と福岡県は、実はまったく離れていないということが判明したからだ。今までの地図は明らかに両島を離して書いていたような気がしてならないのである。今回、縁あって下関に一泊して、現地の水族館などでこのあたりの地形をまざまざと見るにつけ、おっと思った。本州と九州の間にある関門海峡は、S字型に入り組んでいて、それはあたかもジグソーパズルの凹凸部分のカーブに似ている。最も狭いところで500M程度しか離れておらず、実際に下関の唐戸市場あたりから対岸の門司港辺りを眺めれば、妙な接近感を覚えるものだ。近い。そう、実は両島は非常に近かったのだ。
頻繁に往来する船舶を眺めつつ、香港の景色に似ているかなと思いつつ、巌流島の決闘などのことを思いつつ、この関門海峡は美しいのである。海の近くで育った者には、この潮風が心地よく、とても初めて訪問した街にいるとは思えない親近感を覚えるから不思議である。両岸に展望タワーもあるようで、両島を結ぶ橋とトンネルは実際の距離をますます近づけるのだった。すぐそこにある対岸は九州。何とも不思議な空間である。

手前が九州 向こう側が下関 門司側から海響館あたりを望む

 さて、地形の確認をしつつ、下関の夜の町へ。下関で最も美しい某女史
(自分調べ)推薦のお寿司屋さんへ。この下関随一と言わしめる名店は、わけあってその場所も店名も明らかに出来ないが、名店と呼ぶに相応しい味わいであった。なかでも生アナゴは、地元ならではの旬。アナゴを生で握ってもらうこと自体初めての経験ながら、そのおいしさは無上の喜びなのである。このコリコリ感がたまらないぞ。アナゴは今まで大阪・谷九の八正のぐるりと一周する白い酒蒸のそれが印象的だったが、この味もまた格別だ。東の寿司大や西の鮨おさむと比べてシャリは固めながら、カウンターで頬張る幸せは、なんともかんともうれしい限りである。しかもワインはルーミエだったりするから極上である。この味を求めて再び下関へ、なんて思うこの頃だ。

 寿司とワインで幸せに浸る一行は、夜のパトロールへ。下関で夜といえば細江町界隈らしく、その中からマイブームのショット・バーへ。カウンターだけのこじんまりとした店舗ながら落ち着いた雰囲気である。店主とのドカベン談義は相当の知識をもってしても勝ち目はないが、こんな負け戦ならドシドシ挑みたかったりもする。宵にまみれて、いつもよりハイペースで飲むカクテルはぐるりぐるりと体内を巡りつつ、肝臓の処理能力も限界に達するのだった・・・。

 ところで下関には市立の水族館がある。その名を海響館といい、響の音の上の文字がSEAをあしらったデザインになっていてなかなか好印象だ。普通、一地方都市の水族館というとその規模も期待できず、一歩引きがちだが、大阪の海遊館と比較してもそん色はなく、なかなか面白い水族館だった。入場料は大人1800円と高めだが、鯨の標本やマンボウ、アシカショーなど結構見所もたくさんあるので、下関に来たならばぜひ立ち寄りたい観光名所だろう。

 さてさて、下関といえば、忘れてならないものがある。河豚である。関東ではフグと濁るが、ここ下関では福をイメージするフクである。南風泊漁港の市を見たいと思いつつも予想通り寝坊をしたのでその願いは叶わなかったが、後日ネットで検索したりした。便利な世の中になったのと思いつつ、http://www.fuku.com/なんてサイトにアクセスしてみたりする。そして肝心の味わいだが、前述の某女史によると残念ながらフクの旬は2月という。2月か。ならば、2月に来るしかないだろう。しかし2月か。まだまだ先の話だなあ。旬になる前に、なんとなく下関の地に再び立っているような気がしないでもないこの頃なのである。

 下関は福岡空港から近い。博多を巡る冒険パートいくつかの折りには、ちょっと足を伸ばしてレッツ・下関だ。


おしまい


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