渋滞の功罪の功の方、または罪の方かも (2004/01/22) |
相模湾沿岸警備隊として、わがフェラーリ(号)も相模湾の海岸線に沿って進む国道134号線を走るケースも増えている。特に冬場のこの時期は、空気も澄んでいて、夕暮れ時の海岸線は、結構ロマンティック街道系のお洒落な道すがら、なのだ。逗子の方から車を走らせ、トンネルを抜けるとそこは材木座海岸。気持ち下り坂でややワインディングしたその道は、スピードが出ていると一瞬、海に吸い込まれそうな錯覚に陥るから結構楽しい。しかし、右折すれば鶴岡八幡宮という由比ガ浜のあたりから江の島にかけては、江ノ電の踏み切り渋滞や、湘南ならではのドラマの撮影渋滞をはじめ、海に面したこの道以外に主要な道路もないことも関係してか、かなりの渋滞を覚悟しなければならないから、職業運転手には辛いかもしれない。
しかし、他の運転手には、ちょっとうれしい渋滞だ。 夕暮れ時、海岸に沿って一直線に伸びるテールランプの赤い帯は、夜景的にそれは美しく、稲村ヶ崎を越えたころからは、江の島越しに富士山を眺めつつ、その裾野あたりに陽が沈んでくれるから、結構ロマンティックだったりするのだ。稲村ヶ崎で夜景マニアと思しきカメラ小僧さん(よくみるとおじさん系で、曇りの日はいない)が、一列に並び夕暮れ時のシャッターチャンスを待ちわびて、その横を渋滞に巻き込まれつつゆっくりと眺めるのも一興で、新しくなった江の島の灯台の明かりと、シルエット状態になった富士、そして夕焼けに染まる箱根の稜線を眺めつつ、気持ち10センチ右側に沈んでくれれば、富士の肩にかかって、年賀状通りのかっこいい夕日(注)なのになあと、素朴な希望をこぼしながら、渋滞のテールランプはゆっくりと向こうに進んでいくのだ。なんともいい風景。そして窓を開ければ、波打ち際も近いので、波の音も静かに聴こえてくる。まだ何とか視界がきく海岸には、白い波も見え隠れし、カップルが仲良く手を繋いで歩く様子も見えたりして、なかにはワインらしいボトルを持ったりするものもいて、(寒いのにご苦労なこってと羨ましがりつつ)、なんともいい感じなのである。 由比ヶ浜から江の島まで、空いていれば10分ほどしかかからない道のりを、1時間以上もかけてゆっくりと進む。視界には夕暮れ時の富士と江の島と渋滞の赤いランプの帯。耳には波の音。江の島界隈在住の某氏によれば、ここはまさに身近なデートスポット。幾分多めに消費するガソリン代以外は、この湘南を象徴する風景は無料なのだ。車内にはお気に入りの音楽をかけ、愛しの女性を助手席に座らせて、(こんな時は国産車の方が、大切な女性を海側に座らせることができるので、外車が何だと自慢できたりする・・・)、目の前に展開される夜景をゆっくりと楽しんだひにゃ、ムードも絶好調なのだ。しかもコストパフォーマンスは最高で、気分が高まれば、場所柄ホテルを探すのにも苦労はしない・・・らしい。まさにデートをするには(それが出来る人に限るのだが)、渋滞サマサマなのだ。 渋滞はイライラが募るものだが、湘南のこの一角だけは、事情も違う。わざわざ渋滞を見越してやってくるカップルを見つけては、石を投げつけてやるよりも、そっと応援したい気分になるのは、あまりにも夜景が美しいからだろうか。それとも、少しばかり歳をとってしまったからだろうか。 てやんでい、ガムでも食べよっと、なのである。 (注) 年賀状のそれは、朝日のような気がしないでもない・・・。 おしまい Copyright (C) 2004 Yuji Nishikata All Rights Reserved.
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