ゴッホの絵の具 (2006/02/02)

 
 ゴッホといえば、私の大好きな画家の一人で、一時期そのレプリカを部屋に飾ったり、ヨーロッパ各地に散らばる彼の作品を見に美術館めぐりをしたり、先日のプーシキン美術館展でも彼の作品の前でしばらくの時を過ごしたものだった。彼の独特の作風は、遠めで見てもゴッホの絵だとわかるくらいある種の統一感があるが、なぜ私を含める(含めさせてください)日本人に圧倒的に支持されるのか、不思議でならなかった。

 明るい色調と、巨大化しない小さなキャンパスは、親近感を覚え、しかし耳を切り取ってしまったり、自殺してしまったりと影の要素も抱えつつ、ゴッホは不思議な画家の一人でもあった。そんなゴッホの魅力を日本画家の千住博はその著書(注)の中で、的確に解説してくれ、私の長年の疑問は、ここに大きく開放されたのだった。

 生前のゴッホは大貧乏で知られ、弟の支援なくして生活すらおぼつかなかったようだが、ひとつだけこだわった物があったという。それは、絵の具。ゴッホの絵の具は、最高級のものらしく、それゆえに100年前にも描かれた作品にもかかわらず、色落ちも剥離もせず、当時の鮮やかな色彩そのままに、私の目を癒してくれるのだった。

 絵の具が本物だった。

 この事実は、ゴッホの魅力を的確に示している。本物だからか。なるへそ、なのである。ゴッホがなぜに本物の絵の具にこだわったのか。その理由は氏の著書に譲るとして、この精神は、私のブルゴーニュワインに対するロブマイヤー・バレリーナシリーズの選択という無謀とも思える事柄に裏づけを得たようでもあり、まさに親近感を覚えつつ、ゴッホは私の選択をわかってくれるだろうと独りよがりをしてみたりした。

 本物志向。そこは譲れない一線かもしれない。ゴッホが絵の具にこだわったように・・・。


 注 = 「ニューヨーク美術案内」 千住博 野地秩嘉 光文社新書刊


 おしまい


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