にっぽんハッピーワイン


 ひとりごと・・・。


 2004年9月に、弊サイト内において日本のワインを特集しようと思い、その準備をしつつ、早くも、7ヶ月が経ってしまった。月日の経つのは早いなあと思いつつ、都内の有名書店を訪れれば、日本に流通するワイン系の雑誌のほとんどに、日本のワインが特集されている事実に気がつくことができるのだった。

 (家の近所の本屋(そんなに小さくはないのだが・・・)には、ワイン本は一誌を除いて販売されておらず、立ち読みしようにも隣町の駅ビルの中堅本屋に出向くしかなかったりする。ワインブームは完璧に終わっているのかな?)

 この数ヶ月でワイン系雑誌が猫も杓子も特集し、走馬灯のように駆け巡った日本のワインであるが、個人的に一抹の不安を抱えたまま、ゴールデンウィークを迎えようとしている。そう、私はこんなことを感じているのだ。それは、各誌が絶賛し、ゴールデンウイークに消費者が現地を訪ね、そして生き急いだ日本のワインブームは終わる・・・というものだ。私は、大きなお世話ながらも、ゴールデンウィーク以降の日本のワインブームのかげりを心配し、それではイカンだろうと思っているのだった。

 ときに各誌をぱらぱらと捲ってみれば、概ねその切口は同じで、それは私の文章そのものに要約された。何誌もがワイン産地を訪れ、その喜びを異口同音に記事にする。それらは、確かに的は外していないが、少々飽きてきた感も否めない。それが証拠に、最近発売された雑誌には明らかに生産者の困惑も見受けられ、一時にパーとスポットライトを浴びせる手法に、辟易しているように見受けられるのだった。某ワイナリーの温厚な某氏が、某誌の取材に苛立ちを感じているような、そんな記事を読むにつけ、「ブーム」の光の部分に目が馴染んでしまった感を拭いきれずにいる。

 日本のワインは、何人もの熱き情熱を秘めた若手博学系花形醸造家(ていうのかな?)の登場で脚光を浴びているが、実は畑の現場では、様々な問題を抱え、幾多の困難もすでに、間近に迫っている。それらのいくつかはワインセミナーを通じて紹介したりしているが、一連の日本のワインブームに便乗したワイン雑誌を読んで、スポットライトが当たった部分(というよりも当てやすい部分)に興味を持ち、一般消費者がこのゴールデンウィークに産地に出かけ、畑を見、ワインを飲んで、「面白かったね、美味しかったね、でも渋滞してたね」、で終わりそうな気配を感じるのは私だけだろうか。
 
 日本のワインには、ホリエモン某氏曰くの「想定内」の問題がいたるところで山積みされ、その解決策は見出しにくい状況で、今日の日本のワインブームを迎えてしまった。切羽詰る問題に押しつぶされる前に、まずはブームは作らなければならなかった日本のワイン造りの状況にも一理あるが、高学歴醸造家の情熱によって造られた高品質な日本のワインは、脚光も浴びやすい反面、それ以上のスポットライトが用意されていないのも現実なのだろう。次の一手、次の明るい話題があまりない・・・。

 日本のワインは、身近にもかかわらず、その物珍しさがあって、ワイン好きの食卓を一巡するパワーを持っているが、一通り飲まれてドラクエで言うところのワイン的「経験値」を積むだけで終わってはいけないと思う。ブドウは毎年実り、そしてワインは毎年造られていくのだから・・・。


 ところで、先日、都内某所で日本のワイナリーの大注目株的存在の二社の栽培家兼醸造家を招いての無料試飲会に、片方の一社からの紹介を得て参加する機会に恵まれた。対象は一般消費者で、某ワインショップのプロモーションの一環的なイベントだった。さすがは注目を集めるワイナリーだけに、平日の仕事帰りの時間帯の会場内はごった返しており、日本のワインの実力をまざまざと体感できたのだった。

 そのイベントは、生産者を呼んでの試飲即売会の趣が強く、ショップの常連さんがひっきりなしにワインの試飲をしては、その美味しさに歓喜の声を上げていた。私のワインセミナーに参加していただいている方、数名にもお会いし、日本のワインが人々の頬を紅く染めていく様は、とてもすばらしい光景だった。日本のワインが、いい感じで浸透していく・・・。雑誌でワインを知り、実際に生産者と接しながら、日本のワインを楽しんでいく。ハッピーワインの体感。ワインはやはり飲んで何ぼの嗜好品。百聞は一飲にしかず?のごとく、自分の舌で、「おっうまいじゃん」と感じてからスタートする物語があると思う。実際にワインに触れて、生活の一部に溶け込めたら、なんて幸せなんだろうと思う。そんな機会のひとつに生産者を交えての試飲会というものがあり、それに尽力を惜しまない人々に感謝しつつ、私もグラスを手に取ったりするのだった。

 というわけで、いろいろ日本のワインの状況や数字も判り始めたこの頃。 そろそろ重い筆をとりつつ、日本のワインについていろいろ書き始めようかなと思ったりするある春の夜だった。


おしまい



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