にっぽんハッピーワイン


 ひとりごと その2

 日本のワインがブームになった理由として、最大の要因は、やはり何と言っても、その品質の高さによることだろう。今までの日本のワインといえば、地元の葡萄酒的な存在で、ブドウ産地以外の場所では、食卓を賑わすこともなく、そういえば、誰かがワインの産地に出かけて、そのお土産に、大しておいしくもない甘いワインをもらった経験が、一度はありそうな気配があるくらいだった。日本のワインは、今もなおバルクワインをはじめとして、様々な問題も山積みされているが、それはまた別の機会に触れるとして、ともかく今、こだわりのある日本ワインを口にすれば、かつての悪しきイメージは払拭され、その美味しさにちょっとしたサプライズを感じることができるのだ。

 日本のワインがおいしいのである。

 では、なぜ、日本のワインが美味しくなったのか。それは、造り手の情熱ももちろんだが、若手醸造家たちの博学な知識に裏付けられた技術が開花しているためだと思われる。彼らの知識は、世界レベルに達しているといわれ(他人調べ)、それが証拠に彼らの学歴は凄まじいレベルにある。学歴社会や受験戦争などをここで蒸し返すこともないが、彼らのそれは、まさに圧巻であり、明記に値する実績なのである。順不同で紹介すると・・・。

 国立系では、東京大学 大阪大学 京都大学 山梨大学(大学院) 信州大学 ・・・
 私学系では、東京農業大学 玉川大学 慶應義塾大学 明治大学 中央大学 ・・・

 うーん。凄い学歴である。中には博士号を持つ人までいる。彼らの知識は、高学歴に裏付けられており、発酵の神秘を学術的に理論立てて説明できる能力を持っている。彼らのワイン造りの理論武装は世界最強レベルにあるのだ。そして、彼らがさらに凄いところは、机上の理論だけではなく実際の現場(畑や醸造所)で大いにそれらを実践しているところ。ワイン造りの理屈を知り尽くし、自分なりのビジョンやコンセプトを展開し、それを基に設計図を描き、その当然の成果として実際に造られたワインが美味しくなっているのだ。

 大学は入学するところ・・・。受験生の多くが、大学入試に重きを置いているのに対し、日本のワインを造っている人たちは、明らかにワイン造りのためのステップとして大学を利用していた向きがある。自分のやりたいことのために大学に進学し、そこで知識をマスターし、海外の銘醸産地での実習を経験したり、しなかったりして、日本の現場へ出て行く。学歴は自慢するためにあるのではなく、その知識が必要だったから通ったまで。(専攻が違ったと思えば、惜しげもなく中退したり、転向したりしている)。受験戦争の勝ち負け云々のレベルではない、もっと高度なレベルに彼らは立っていたのである。

 そしていま、メキメキと頭角を現している高学歴を経た若手醸造家たちの一部は、日本ワインの第一人者である故麻井宇介の薫陶を受けた最後の世代でもある。いわゆる「ウスケボーイズ」と呼ばれる人たちで、彼らのワインを口にすれば、逆説的に麻井宇介という人物がいかに凄い人だったかを思い知ることもできるのだった。理論武装し、そして先人のお教えを請うた人たち。

 日本のワインは、情熱ある理論武装した造り手によって造られている。日本の頭脳が、ワインを造っている。そしてその頭脳は脚光を浴びやすく、話題性も備えている。だからブームを作る原動力にもなった。ワイン造りにおいて、経験がフランスに比べて圧倒的に少ない日本では、どうしても化学的な側面によるフォローが必要で、大地の恵みの不安定要件を正確な発酵学・醸造学によってカバーする必要があると思われる。ワイン造りが化学で解明されている今日、必然的な高品質は学識によって裏付けられているのである。

 ワインが、天の恵み、大地の恵み、人の英知の産物ならば、人の英知という一面において、日本のワインは世界屈指の知識と情熱を持っているのであり、他の二点をカバーしつつ、必然的にワインはおいしい方向へと向かっていく。

 日本のワインがおいしくなった理由は、ちゃんと存在しているのだ。

 日本のワインは、ワイン造りのプロが造っている。

 だから、おいしくなっているのだ。


つづく




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