にっぽんハッピーワイン


 2005年 日本の収穫風景 その2 

 2005年8月24日午前。旭洋酒のピノ・ノワール(ブルゴーニュ・クローン)。

 日本でピノ・ノワールによるワイン造りに挑戦している山梨市の旭洋酒。その味わいはアルザスやロワールのそれに似て、濃い色合いや、力強さこそないものの、滋味なお味が醸し出されている。旭洋酒の営業を引き継いだ若き鈴木夫妻は、「まだまだこれからです」と謙遜するが、その味わいはすでに私の心をつかんでいて、そして必ずや日本の食卓に日常的に届くものと信じている。そして今回は幸運にも収穫隊のメンバーにしていただき、早朝の山梨市某所の畑にて収穫に参加させていただいた。

2005年8月24日午前10時半頃 傘掛けされたピノ・ノワール
   
平塚のハッピーレストランの人たちと・・・ 私の左手と収穫されたぶどう

 当主の鈴木夫妻からは、ぶどうの成熟度のレポートを4度に渡り頂戴しつつ、収穫日の候補が絞り込まれ、天候とにらめっこの日々が続いていたのだが、収穫日の最終的な決定は当日の午前6時に行われた。目前に迫った台風の上陸が収穫の判断を決定付けたようだった。

 当日の神奈川県湘南地方の天候は、朝四時現在、雨。「雨かあ・・・。これでは収穫はないかもしれないなあ」と思いつつも、最終決定の6時を待って出発したのでは、7時の収穫開始には間に合わないために、眠たい目を擦り擦りフェラーリ(号)のエンジンに火がともり、一路富士山の向こう側へ走り出したのだった。途中の箱根や御殿場では、雨脚も強くなり、これでは収穫も厳しかろうと思いながら、中止になったら塩山市内のワイナリーで赤ワインでも買って帰ろうかと思いつつ、早朝の国道を飛ばしていった。

 御坂峠のトンネルの手前で、電話があり、収穫を予定通り行うとのこと。「え。でも雨が・・」そんな私の言葉を遮ったのは、鈴木順子女史。「甲府盆地では、雨なんか降ってませんよ」とのこと。思えば、湘南から甲府盆地までは、峠を三つも越えるため、天候も一筋縄ではいかないのだった。

 そんなこんなで早朝7時には畑に到着。畑は草生栽培の第一人者である小川孝郎氏の監修を受け、新短梢栽培(いわゆるロング・コルドン方式)で育てられたピノ・ノワールが美しく整列していて、そして日本特有の天候に配慮されたために、ぶどうのひと房ひと房には、特殊な紙で傘掛けがされていた。収穫の手順や方法を確認した後で、鈴木夫妻とともにピノノワールの畑に繰り出す。そしてまもなく、東京からの電車組も集まり始め、結局は18名くらいの収穫隊が見事に編成され、ひと房収穫しては、一粒一粒丁寧な選別を施しながら、収穫は進んでいくのだった。

 ぶどうが、つぶ単位で選別され、要件に満たない実は、容赦なく破棄された。これもひとえにおいしいワインのため。シャブリのように機械的にぷいっと収穫しようものなら、ものの1時間ほどで終了しそうな感じだが、一粒にこだわるがゆえに時間はドンドン過ぎていき、大人数にもかかわらず、作業はゆっくりとしか進まないのであった。

 作業は、夕方6時ごろまでかかったというが、私は諸般の都合により昼食後に畑を離れ、愛知県へと向かったのだが、(だから早朝から参加したのだが・・・)、収穫隊に参加された方々との出会いにも恵まれ、とても有意義な収穫風景を体感させていただいた。

 日本での栽培が難しいとされるピノ・ノワール。それに果敢に挑戦する旭洋酒に俄然注目しつつ、私たちが収穫したぶどうから造られるワインの完成が待ち遠しかったりもするのだった。それにしても畑での農作業は、ワイン好きの心を絶妙にくすぐってきますね。


つづく





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