にっぽんハッピーワイン


唐津焼で飲む日本ワイン 2006/11/30

 最近、甲州ワインを唐津焼の名窯 隆太窯の南蛮ビアコップで楽しむ日々が続いている。日本の土を焼いて造られた器で、日本の土から生まれたワインを楽しむということに、素朴な感動を覚えているからだ。和のカウンターで、甲州ワインを唐津焼に注いで、根野菜とともに味わうとき、土で繋がる三角形に、日本人に生まれてよかったと感激するのだ。

 唐津焼で、日本のワインを楽しむ最大のメリットは、土の共有であり、隆太窯の繊細でエレガントなタッチが、甲州ワインをやさしく包んでは、収まりを良くしてくれる。残念ながらワインの色あいは直接的には楽しむことはできないが、その代わり、グラスで楽しむ分には決して味わえないニュアンスを、右手に感じることができる。

 それは、ワインの温度を掌で感じる、ということ。手のひらにすっぽりと収まる唐津焼は、あたかも大き目の里芋のような形をしていて、実に、手に馴染む。唐津焼に注いだ甲州ワインは、白ワインの適温として10℃前後に冷やされていて、その温度を器を通して感じることができてしまう。これがグラスでは塩梅が良くない。ワイングラスは、ボールの部分を持ってしまうと、手のひらの温度がワインに伝わり、飲み時の温度を逸してしまう。また手の脂がグラスに残り、見た目にもよろしくない。しかし唐津焼なら脂の心配はなくなり、また土が持つ保温効果が、掌にあってワインに体温を伝えることなく、しかしワインの温度を掌に感じることができ、その冷たい感触は、エキゾチック感すら意識させ、とても居心地がいいものなのだ。

 ワインの色は、陶器ゆえに、やむを得ず犠牲にするが、香りはロブマイヤーグラスと遜色なく、そして肝心のワインの温度を感じることができるとなれば、唐津焼で楽しむ日本ワインというありようも、否定しなくてもよさそうだと思う次第だ。

 掌にワインの温度を感じて・・・。

 これをヨーロッパのワインでやりたいとは思いつかないが、日本の土で繋がる器とワインの関係に、感謝しつつ、物は試しに手にとって見れば、きっと日本のワインのレベルの高さと尊さに、感激せざるを得ないだろう。ココに本物だけが通じる世界観を信じるからだ。

 和のテーブルに、甲州ワインと唐津焼。そしてお料理。

 唐津焼で楽しむ甲州ワインには、日本酒との共通点の多さに、新たなる感激を覚えつつ、しかしやはり日本酒とは違う、ワインならではの悦びにひとしおとなる。刺身とワインの相性は、かなり難しいテーマであるが、素朴さを表現する甲州ワインと唐津焼のコンビネーションにかかれば、わさびの力を借りつつも、絶妙な組み合わせに、日本人のDNAもくすぐられることだろう。

 きちっと造られた甲州ワインと、唐津焼の匠。

 とてもおいしい風景である。




注 甲州ワインの中でも、樽系のものは、少し違うかも・・・。

 以上



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