先日、都内某所でエマニュエル・ルジェの2002年の水平テイスティングを食事と共に楽しむ企画を開催しました。ここでは、そのとき苦心したワインのサービス順についてちょっと触れてみよう。 質問文はこちらから。 回答というか当日の順番。 ワイン(エマニュエル・ルジェの2002年) 甲州2003 by 機山洋酒工業 ブルゴーニュ・パストゥグラン 同時に (しかもブラインド) ヴォーヌ・ロマネ1級クロパラントー 特級エシェゾー シャンパーニュ・ブリッュト by ジャック・セロス ブルゴーニュ サビニー・レ・ボーヌ ヴォーヌ・ロマネ ニュイ・サン・ジョルジュ 【理由】 まず、金曜日の19h30スタートのため、仕事の都合で遅れてこられる方も数名いらっしゃることが予想され、実際にそうなったので、アペリティフと全員集合までの時間稼ぎを兼ねて、キザンの甲州2003をINAOグラスで飲みながら、キザンのすばらしさやこれから水平に飲んでいくルジェの話題などで大いにその場を盛り上げたりした。2003年は梅雨の終わりがはっきりせず、雨が多かったとしだが、9月に入り晴天に恵まれ、とても濃縮したエキスを楽しむことが出来るビンテージになったようで、すばらしい甲州であった。つづいて、パストゥグランをブルゴーニュグラス(メーカー不明)でサービスしつつ、赤ワインの味わいを思い出してもらいながら、もう少しでやってくる方々を待ちわびることにした。ガメイとピノ・ノワールのブレンドワインは、ルジェワールドを継承していて、これからの冒険のよき水先案内人になってくれた。 そして、全員が揃ってしばらく経った頃に、ブルゴーニュ魂的には、極めて異例ながら、メインワインのクロパラントーとエシェゾーを同時に、しかもブラインドでサービスした。この二つのワインは他のワインと価格差がありすぎ、また酔っ払って飲むには忍びないほどの味わいなので、素面に近い状態で、そのおいしさを共有したかったために、いきなりメインワインの登場とあいなった。しかも両者は常に比較されることから、ブラインド(といっても二つの銘柄は公言)でサービスし、先入観を払拭した上でどちらがうまいか、どちらの味が好みかの判断をしてもらった。 ところでサービス自体は純粋には同時は無理なので、まずはエシェゾーをリーデル・ヴィノム・ブルゴーニュグラスに注いで、各自に配り、それを終えてからもうひとつずつ用意していた同じグラスにクロパラントーを注いで、すぐに配った。エシェゾーのグラスには付箋をつけて、混乱を避けてみた。またエシェゾーを先にサービスしたのにはエマニュエル・ルジェ本人からの助言があり、また蔵での試飲もクロパラが最後なので、その通りとした。 はてさて、その結果は・・・。見事に評価は二分され、両者とも甲乙つけがたいほどの味わいで、ハイ・インパクトのクロパラントーに対して、潜在能力のエシェゾーといった感が印象的であった。このクラスになると、もうそれは好みの問題だったようだ。で、約70mlずつ注いだグラスは、一気に飲み干されることはなく、ゆっくりと楽しんでもらいながら、食事などにあわせつつ、次のワインと同時進行をするのだった。(最後まで引っ張っていた方もいた) 両巨塔を各グラスに残しながら、気分転換を兼ねてジャック・セロスのシャンパーニュをフルート型のシャンパングラスではなく、細身系のシャルドネグラスに、白ワインとしてサービス。これがまた大変にすばらしく、両巨塔を決して邪魔することなく、シャルドネの大いなる魅力を開花させてくれた。あまりのすばらしさに、本当はここで乾杯をするつもりだったが、スッカリ忘れてしまった・・・。ここでシャンパンを入れたのには訳があり、特級からいきなりブルゴーニュ地方名ワインに戻っては、ブルゴーニュのおいしさが楽しめなくなる恐れがあったためで、ワンクッション入れたかったのだ。 そしてこの頃になるとパストゥグランはグラスからなくなっているので、ここへブルゴーニュを注ぐ。これで各自4脚のグラスには、エシェゾー、クロパラ、ジャック・セロス、ブルゴーニュの4種類のワインが置かれ、食事と共にセロスとブルゴーニュが楽しまれ、その合間に両巨塔をテイスティングする状態が展開されるのだった。そしてブルゴーニュを飲み終わった人から、サビニー・レ・ボーヌへと移行する。 このサビニー・レ・ボーヌがまたうまい。どのくらいうまいかというと。例えば上司に怒られたり、恋人と喧嘩したり、どうも腹の虫が収まらない夜に、やけ食い、やけ買い、やけ飲みの要領で、自宅で一人でこのサビニー・レ・ボーヌをあけ、グビグビのみながら、「うめーじゃねえか。このやろう」と怒りながら、泣きながら、そして笑いながらついつい飲み干してしまいそうで、気づいた頃にはコタツで爆睡し、翌朝の歯磨きのときに妙に自分の息がおいしそうな、そんなおいしさだった。サビニー・レ・ボーヌにしては破格の価格設定ながら、一人で飲んでしまっても、それほどの罪悪感に苦しむこともなく、仲直りしてから一緒に飲めばよかったと思うよりも、一人でかっくらってしまった方が楽しそうな、そんな味わいだった。(下世話な例えですみません) そして第二部の山場として、ヴォーヌ・ロマネとニュイ・サン・ジョルジュの比較が待ち構えている。ここまでくると酔いも楽しく、また食事のメインとも合わせたくなるので、ブラインドでのサービスはやめて、素直に楽しむ方向へと導かせてもらった。最初に空いたグラスにヴォーヌ・ロマネをサービスし、同じ村名格ながら、ロマネ・コンティを有するヴォーヌ・ロマネと、一級までしかなく、モンラッシェの上を通過するはずだった高速道路が迂回され、この村を横切る形になったサビニーとの比較が楽しかった。ヴォーヌ・ロマネは自棄酒にするにはちょっと凄すぎて、仲直りしてから、飲みたいワインだろう。 そしてラストは、ニュイ・サン・ジョルジュ。ヴォーヌ・ロマネとの順番は、蔵での試飲の順に沿ったものであり、幾分甘みを帯びた芳醇な味わいのヴォーヌ・ロマネに対して、ストイックな緊張感のあるニュイサンジョルジュの方が、食事の最後をきりりと引き締める効果もあり、なかなかにいい順番だったと思われた。両者の違いもまた楽しいので、機会があれば何度でもやってみたい。 【まとめ】 今回は使用可能なグラスは、テーブルの都合などにより各自4脚しか用意できず、同じグラスを何度も使って頂くことになったが、エシェゾーとクロパラントーはゆったりと楽しんでもらえるよう専用グラス的な使用を可能に出来た。また平日ということで遅刻者が想定され、なおかつ10人で9本という分量だったためにこの順番を採用してみた。実は先月は某所にて12名でアペラシオン順にサービスした会も開催していて、12名と10名による分量の違い、あるいは若干のワインの違いなども考慮しつつ、それぞれの会でエマニュエル・ルジェの魅力に迫ることができたかと思う。関係各位に感謝すると共に、今度はヴォーヌ・ロマネ1級ボーモンとアリゴテを加えた完全制覇の会を企画したいと思いつつ、希少兼高値ゆえにそれが出来ないところがブルゴーニュなのである。そしてそれぞれのアペラシオンをどう楽しむか。主題は必ずそこにあると思う、この頃だったりする。 最後に、この問に関して数人の方にメールなどを頂戴しました。違う順番ながら、それぞれに楽しめそうな順番で、今後の会に大いに役立つことと思いながら、この場を借りてお礼申し上げます。 おしまい |