シャトー・ド・シャンボール・ミュジニー
試飲日 2000年9月15日
場 所    神奈川県内某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Chateau de Chambolle-Musigny
Vintage 1997
テーマ 伝統のミュジニー。
ワイン Musigny


 日本でシャトー・ド・シャンボール・ミュジニーのグランクリュを飲める機会はそんなに多くない。その原因は日本にエージェントがないためであるが、なぜかそんな逆境にもめげず、試飲する悦びに恵まれた。
 ブルゴーニュのシャトーについてはシャトー・ド・ポマールを参照いただくことにして、早速レポートに取り掛かろう。


<飲み方>
 氷水に浸し冷やすことしばし。推定温度:摂氏3度まで冷やす。グランクリュのワインをここまで冷やすのは勇気がいるが、その判断は前週に試飲した某美人講師の経験による。スライム型のデカンタに静かに流し込み、蓋をして待つこと1時間。温度も室温に近くなっていた。その抜栓方法の完璧さを知るのには、ワインがグラスに注がれるまでの、ほんの僅かな時間だけが必要だった。


<味の印象>
 極上ミュジニーの典型。優雅で女性的な味わいに、この畑に魅了される人が絶えないことを物語る。完璧。過去最高峰の極上の一杯である。しばらくはこの感激が消えることはないだろう。もしかしたら死ぬまで残っているかもしれない。

 ラズベリー系の濃縮された果実香には、全身の細胞が驚きを隠せない。全身が震えるような香には美しい厚みがあり、豊かな複雑さがある。時間と共にミルク香も加わり、最後は極上のイチゴジャムも彩られた。すごい。これはすごい。
 飲み応えも充分すぎる。飲み込んだ後に倍になってやってくるうまみ成分は、ただものではない。王道的なうまさ。味には上品な重みがあり、濃密である。飲むごとにクラクラする心地。シャンボール・ミュジニーグラスで飲めば、一層品のよさが極まり、快楽である。最後までへたることのない奥深さは、この畑の実力をいかんなく発揮する。とまらない唾は、このワインを全身全霊が欲しいと言っている証拠だ。完璧。

 人はそれぞれうまいの基準を持っている。このミュジニはその基準の枠を広げ、確実に生きることの悦びを増やしてくれる。うまいの基準がまたひとつ加わった(ドラクエのレベルアップのあの効果音が耳の奥でこだました)。

 このミュジニーは飲み干してもなお、人々を魅了しつづける。INAOグラスに残った香は、誰もが言葉を失い、ただひたすらその余韻に浸っている。グラスの中に入ってしまいたいほどの甘く官能的な香は延々と続く。グラスを温めれば甘味が増し、参加者の多くが最後のオールド・トゥニーポートを拒絶し、最後の最後までその余韻を堪能していたことが、言葉での説明を不要にしていた。

 このワインは18,000円もするが、その味わいは優にその価値を超え、安すぎるとの印象を覚えた。翌日お店に行ったが、開店直後に完売していたことは言うまでもない。
 そして今回の試飲の特異な抜栓方法は、このワインがとてつもなく長熟タイプであることを物語っている。そのままグラスから飲むにはあまりにも早すぎる。本来の実力を開花させるには、ひたすら時を待つか(10年単位)、技術によって引き出すかのいずれかしかない。時間的にも、金銭的にも待てないものとしては、その技術を学ぶことでしかこのワインの凄さを感動できない。しかし、この感動を共有してしまった。感謝である。


<醸造について>
 シャトー・ド・シャンボール・ミュジニーは100年前に設立された伝統あるぶどう園である。現在は新進気鋭のドメーヌ・J・フレデリック・ミュニュレ(Jacques_FREDERIC MUGNIER)が醸造している。ドメーヌはヴォグエの奥にあり、極上のミュジニーとボンヌ・マールを造り出している。ちなみにミュジニーの畑は1.1haあり、年産3,000本以上は造っていると推定される。


<おまけ>
 ワイン専門の某季刊誌の次回の特集はシャンボール・ミュジニーである。ブルゴーニュはヴォーヌ・ロマネに続く特集だが、その発売が今から心待ちである。発売日は12月4日。前述の美人講師の誕生日でもあり、当日は極上のシャンボール・ミュジニー村のワインでお祝いしたいところである。

以上


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