メゾン・ルイ・ラトゥール
試飲日 2001年9月2日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOC白ワイン
生産者 Maison Louis Latour (Beaune)  
Vintage 1993
テーマ 怪しいモンラッシェ
ワイン MONTRACHET

<怪しい所以>
 今回のワインの入手経路はやや怪しいために、ワイン本来の実力値を垣間見られないことを明らかにしなければならない。購入は今をさること二年前、まだこのドリンキングレポートの連載前のことである。場所は香港某所。価格は当時の価格で約3万円だったと思う。そこのワイン専門店が一応ちゃんとした店構えだったことと、モンラシェへの憧れと、澳門でのちょいとしたあぶく銭のために、思い切って買ってしまったのだ。
 このときドメーヌ物のシャトー・コルトン・グランセ1995も購入していた。コルトンは帰国後まもなくドニブランをご馳走になった某所にてテイスティングしたが、はっきりいって駄目ワインだった。うまみ成分をついぞ感じることのなかったその味わいは、貴重な経験であるとともに、このモンラシェへの不安を増大させた。キャップシールがこびりつき、沈みがちなコルクがその不安を妙に根拠付けていた。
 ゴルドンジャルルマーグニュ事件の記憶も鮮明で、このワインをあけるタイミングを見計らっていたが、いつに「その時」を得たのだった。モンラシェを知る先輩方にも味わっていただけたことも感謝の気持ちである。


<味わい>
 この村の特級らしく、限りなく黄金に近い濃い色合いである。とろみ感もあり、私の不安はやや、なりを潜めていた。香りはコルク臭が前面に出ていて、しばらく待つ必要があった。ここでむやみにグラスを回してしまっては、味わい自体に傷をつけかねないため、じっと待つ。しかし消えない。シェリー香も感じられ、これは不安的中かもしれない。口に含めば決してまずくはない。味にもシェリー含みの感があり、柑橘系はない。複雑さのなかに雑味を感じざるを得なかった。決してまずくはないが、おいしくもない。

 偶然にも前日某所にてバショレ・ラモネ 1992ビアンブニュ・バタール・モンラッシェを堪能させていただいたが、そのワインはシェリー香が強烈でホストの某氏はふがいない表情で捨ててしまった。決してまずくはないが、捨てるのもやむを得ない感があった。二日連続の様相を呈してきていた。

 よくモンラシェは当たり外れが大きく、感動する割合はトコトン低いと言う。なるほどこれが、外れモンラッシェなのだろうか。捨てるには忍びない味わいに、このワインをただ眺める時間が過ぎた。香港の太陽を燦燦と浴びた可能性を思い描きながら・・・。
 ただただ時が流れていたが、某所で某氏が飲んでいるという情報を事前につかんでいたこともあり、このワインにストッパーをかけ、場所を変えることにした。

 抜栓して3時間。かなり冷やして再度挑戦した。んん。さっきよりは良くなっている。ようやく現われたバター香は、決して痛んでいないことを物語っている。素直な感想を綴れば、このモンラシェは微妙な味わいである。痛んでいるか、否か。49対51で痛んでいないと判断できる。おいしいかおいしくないか。51対49でおいしいかもしれない。結局約5名で飲み干したことを考えると、ばずれでもないのだろう。

 モンラッシェは今回で3回目の試飲であり、前二作がコントラフォンであることを考えると、このワインを最初に飲まなくて良かったと思わざるを得ない。このモンラシェが、白ワインの最高の基準にならなかったことと、ラフォンの偉大さをつくづく感じることが貴重である。ワインは畑の場所が重要であるが、入手経路もつくづく大切である。インターネットでの取引も盛んなようだが、私はワインそのものを見ずして購入する勇気を持たない。ボトルを見ていればエチケットの情報以外にも、このワインの旅路や育った環境も垣間見ることが出来るからだ。今回のワインは自分の目で確認しておきながら、当時の経験不足のために、やや不本意な味わいに、高い勉強料を払った思いもする。まあ、ワインはいろいろあるから楽しいのさと自分を慰めてみたりするテイスティングであった。


<ルイ・ラトゥールのモンラシェ>
 ルイ・ラトゥールは自社畑をモンラシェに持っていない。ネゴシアンものである。ボトルにメゾンとあり、ドメーヌものとははっきり区別できる。ルイ・ラトゥールはブルゴーニュにおいて屈指のネゴシアン・ドメーヌであり、特に白ワインに定評がある。コルトン・シャルルマーニュとシュバリエ・モンラッシェ・レ・ドモワゼルがドメーヌものの筆頭である。
 今回のワインをもって、モンラシェの評価をするのは、酷である。いつかどこかでめぐり合えたなら、もう一度楽しみたいものである。


以上
 


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