＜サンベラン　クロ・ア・ラ・コート＞
　抜栓後INAOグラスへ。輝く黄金に黄色がかなりの割合で入り込んだようなとても印象深い色合いである。薄い蜂蜜香がメインにあり、樽から来るバニラが程よく混ざり、澄んだアロマの中にコート・ド・ボーヌの銘醸畑に見られる品のよさをも感じる香りが心地よい。とろみ感が十二分にあり、舌にまとわりつくような旨み成分が驚きを隠せないでいる。飲み心地は極めてシルキーである。この滑らかさはいったい何なのだ。サン・ベランというマコネ地区のアペラシオンにはこの味わいはないはずなのに、なぜここにしっかりと存在するのか混乱するほどにうまい。抜栓30分後のグラスは焼いたりんごとシナモンの香りが満たされていて、エキスが背筋に染み込むインパクトである。香水も混ざり、いつまでもへたることのない味わいは、正直びっくりであり、うれしい限りである。若干少ないように思えた酸もしっかり存在感をアピールしてきて、ふくよかな中に一筋の緊張感ももたらしてくれている。

　さすがはコルディエである。プイイ・フイッセでコントラフォンの1998モンラシェを凌駕するワインを造ったコルディエはここ、サンベランでも大変印象深いワインを造ってしまったのか。新しい時代の幕開けを感じざるを得ない。これはすごい。3000円とはまったく思えない味わいは、買占めの欲望に駆られる。これは買いだろう。このワインさえあれば、低落気味の私の株も上がること間違い無しだ。

　コルディエのプイイ・フイッセはブルゴーニュの頂点を意識させるほどの実力はあるものの、高いアルコール感(最上級のジュリエットは14.5%もある)が好みを分ける。しかし、このサン・ベランは誰が飲んでも、どうやって飲んでもおいしいワインである。ワイン好きにはたまらない。入門ワインとしても別格だし、トコトン飲み尽くしている先輩方にも驚きの一撃を与えてしまう。万能型ワインにしてこの手ごろ感がやたらとうれしくなる逸品である。こういう出会いは、ワインが好きでよかったと思えるからうれしい。


＜参考＞
　1998 プイイ・フイッセ水平テイスティング


以上