デュジャーク
試飲日 2002年06月23日
場 所    神奈川県某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Domaine Dujac (Morey St Denis)    
Vintage 1997
テーマ デュジャーク節
ワイン Morey St Denis 1er cru

<モレサンドニ 1級>

 6月下旬にしては涼しい夜。抜栓後すぐINAOグラスへ。桜色を深くして、気持ち焦がしたようなたようなデュジャーク色。この薄い色合いが何ともいえず、いい。グラスからは優雅に香水やイチヂクが香ってくる。この香りだけでもすでにデュジャークワールドに引き込まれている自分に気付きながら口に含む。まさに「和」に通ずるお出汁の味わい。果実味よりもうまみ成分が表に出ていて、滑らかなタンニンも程よいアルコール感も、ともにワインのエキスとなって液体に同化している。ぎゅっぎゅっと内側に引き締まるような味わいは、ブルゴーニュワインが目指すひとつの指標的なそれであり、誰もがこの味わいを達成するために、どれほどのたゆまぬ努力を続けているのだろう想像させてくる。すばらしい。気持ち酸味が前に出かかっているが、それを覆い隠すような甘味のあるうまみ成分が、飲み手の溜息すらおいしくさせている。熟成の域に入りつつある味わいは焦がした感じもうっすらと感じられ、今後どのような熟成カーブを描くのかを空想するだけで、涎も出てこようというものだ。ベスト・オブ・ブルゴーニュの称号に最も近いワインとして、しばらくは思い出し笑いをしそうである。
 
 2002年5月セラー蔵出。

 ちなみに同じビンテージのモレ・サン・ドニもほぼ同じ熟成カーブを描いている。都内某レストランで頂けば、白身魚にもホワイトアスパラにも肉にも、そしてどんな調理法にも絶妙に合わせてくるすばらしさを堪能できるだろう。料理を引き立てる最高のワインであり、単独で飲んでもほぼ完璧に近い味わいを楽しめる。ただ残念ながら、完売のため某レストランのワインリストからは外れてしまった。

 今回の1997モレ・サン・ドニ一級はデュジャーク節全開であった。デュジャーク特有の薄い色合いに、うまみ成分の塊。それはやはり和食に通ずる味わいだ。それはあたかも利尻の昆布出汁を彷彿とさせるお吸い物の味わいに共通する。繊細で気品溢れる和の真髄に迫る味わいを、デュジャークはピノ・ノワールで再現してくる。そこが、日本人に受ける最大の要因であると、私は思っている。今宵の出会いに感謝である。


 ちなみに今回のワインは半年前にも堪能している。半年前との違いは熟成感だ。


以上
 


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