ユべール・リニエ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年09月18日 | |||||||||||||||||||||||
<クロ・ド・ラ・ロッシュ 1999>
都内某所の有料テイスティング。抜栓時間不明(但し2時間以内)、ボトル残量約半分。リーデルヴィノムシリーズのブルゴーニュグラスへ。某氏が注文したものをちょこっと頂く。 今回のクロ・ド・ラ・ロッシュは試飲前にある程度予想がつくワインだった。このリニエの看板ワインは華やかな上品さが特徴であり、それが1999という黒系果実ヘビー級の味わいと、どう組み合わされるのか興味があった。ドメーヌを訪問した際、1999はモレ一級VVを試飲させていただいており、その経験を紐解けば、見えないカーブが描けるかもしれない、であった。 色がかなり濃いルビー色は1999というビンテージを考えれば、納得の色合いだろう。黒系果実味果実香が豊かにズシリと構える味わいだ。お花畑を連想する華やかな香りは、カシス、黒糖、ブラックベリーが複雑に湧き上がっている。この華やかさがリニエ節であり、勢いのあるこの香りには何万も払う価値があったりする。口に含めば黒糖の影響からかかなりの重みを感じる。予想外に滑らかなタンニンは、1999ゆえの濃くって強いはずのクロ・ド・ラ・ロッシュを優雅に包み込む。奥行きのある味わいは長めの余韻とマッチして、心地よいひとときを約束してくれている。 やはり偉大なワインに違いない。しかし、若干ではあるが、この軽い印象が払拭できないのは何ゆえだろうか。リニエ本来の華やかさに1999というヘビー級の味わいが、水と油の如くとまではいかないものの、融合しきれていない面を感じざるを得ないのだ。バランスが悪いと一言で片付けてしまうのは、ワインのポテンシャルが相当高いため不適当だろう。ワインが暴れているとでも表現した方がいいのだろうか。素直に飲み頃になっていないためと匙を投げるのは簡単だが、出会った時が飲み頃を信条としている者にとって、いかにこのズレを修正するか腕の見せ所でもある。 しかし今回は有料テイスティングだ。ボトルの支配権を有していないのだ。そのボトル1本マルマルよこしてくれと要求するには、このワインはあまりにも高すぎる。しかも某氏のグラスを一口ちょこっともらっている居候の身なので(ん。意味が違うか)、なおさら手の出しようが無かったりする。やはり自分で一本購入して、自分で管理しなければ、この偉大なワインを今飲む楽しみは得られないのかもしれない。難しいところである。 想像するに、このワインは、数年間のビン熟成を待てば、誰もが拍手喝采するワインになり得るだろう。偉大なブルゴーニュワインを代表し得る存在だ。しかし、今出会ってしまった者として、いかにおいしく頂くか。思案のしどころだったりもする。おそらくデカンタして、グラスをロブマイヤーNo.3にすれば、かなりおいしく頂けるはずであるが、いかんせん手元に無いため、そんな思いも杞憂で終わってしまう。自分ならああするのにという欲望を押さえつつ、静かにグラスを某氏に返すのだった。 ちなみに1997のクロ・ド・ラ・ロッシュは過去最高のブルゴーニュの一本として深く心に刻まれている。 以上 |