ポンソ
試飲日 2002年10月26日
場 所    神奈川県某所   
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOC赤ワイン   
生産者 Domaine Ponsot (Morey st Denis)
Vintage 1996
テーマ 疑惑の真相 その弐
ワイン CLOS DE LA ROCHE VV
 
<試飲 その弐>                    試飲 その壱はこちら
<はじめに>
 前回の試飲で納得がいかない部分があり、三日後に再度挑戦することにした。

<クロ・ド・ラ・ロッシュ>
 室温23℃。常温のまま細長いタイプのデカンタに注いで、蓋をせずに約十分ほど待ってからINAOグラスへ。推定液温22℃。薄いガーネットが目に優しい色合い。香りはかなり閉じ気味で、沈み込んだ印象があるが、しばらくするとミルクが一瞬顔を出し、湿り気のある布のような、「ぬめり」までいかない濡れた感じの香りが漂ってくる。いい意味での濡れ雑巾と言いたいが、この表現はその香りを嗅がないものには何のことやら分からぬかもしれない。熟成はかなり進んだ印象を受け、果実味に優先する熟成モードがポンソ・ワールドを展開しつつある。口に含めばうまみ成分のなめらかな味わい。唾も予想以上にあふれ出し、なかなかどうしてうまいじゃないかと呟いてしまったりする。バックテイストもすばらしく、長い余韻に身を任せれば、うっとりしていて言葉もでない。知らず知らずのうちに現れる焦がし香にもう一口、このワインを口に含みたくなる味わいだ。まさにグランクリュの名にふさわしい味わいであり、確固たる存在感が飲み手をグイッと引き寄せる。

 デカンタをするだけで、前回の味わいとはまったく違うワインに変貌しているのはなぜだろうか。つくづく不思議であり、これが大いなるブルゴーニュの魅力でもある。パーカーがつけた「87 ?」という評価に前回は賛同したが、今回は明らかに反旗を翻したい。このワインはただグラスに注ぐだけでは平凡を装っていて、本来の味わいを楽しむためには、飲み手に力量を要求するワインなのだろう。今ひとつ納得のいかないワインはデカンタをするなり、温度を変えるなり、グラスを変えるなどして、臨機応変にその味わいを引き出す努力が必要なのだ。

 ドメーヌ・ポンソは古樽の使用やSO2の不使用(註)といった個性的な造り方を実践する造り手であり、それゆえピノ・ノワールの違う世界を垣間見させてくれる。グラスに注いだだけでは平凡な味わいでも、その個性を引き出す努力をすれば、意外な物語の展開が用意されているかもしれない。ちょうど今回のワインのように。

 ほかのワインと比較するための同一条件でのテイスティングでは、決して顔を見せないポンソの個性に脱帽するとともに、仮にブラインドで試飲するならば、前回のワインと同じワインだと判断できるかどうか大いに疑問符が点灯するワインでもある。

 情報によれば今回のワインは先月ポンソのセラーを蔵出しされたワインで、完璧な熟成を得ているという。パーカーの購入したポンソのワインは保存状態に難があるとの情報もあり、SO2未使用が影響しているかもしれない。いずれにしても今回はちゃんとワインを扱えば、グランクリュの名に恥じないワインとして堪能できるので、パーカーの評価に反対の意思表示をしたのち、グラスに残ったワインを飲み干すこととしよう。

 飲み方と保存状態の問題と高価格が錯綜し、ポンソはなかなか難しいが、ブルゴーニュワインを語るなら無視できない造り手の一人であろう。いずれにしても今回のワインはとてもうまかった。


(註)亜硫酸SO2は、果汁の酸化防止や有害微生物の阻止、果皮からの色素の抽出等の目的で添加される。


以上



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