ポンソ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年10月23日 | |||||||||||||||||||||||
<はじめに>
今回のドメーヌ・ポンソの1996年クロ・ド・ラ・ロッシュ VV(古木)はロバート・M・パーカーJrの評価を参照する必要があるだろう。なぜならばパーカーは95年と96年のドメーヌ・ポンソの評価を軒並み下方修正しているからで、例えば1995ジュブレ・シャンベルタン・キュベ・ドゥ・ラベイユにいたっては67 ?という最低の評価に変更しているのだ。このようなある意味で特殊なワインを試飲するということは、彼のワインへの評価について自分なりの結論を出しうるチャンスであり、貴重な経験でもある。まずはその文章を引用してみる(註)。文章はグリヨット・シャンベルタンの変貌振りを嘆いた後に続いている。 パーカーズポイント = 87 ? 「1996年のクロ・ドゥ・ラ・ロッシュ・ヴィエイユ・ヴィーニュは、初めに92〜95点の評価をしたが、瓶詰め後もう一度試飲すると、これもがっかりするワインとなっていた。グリヨットよりもいくらか暗い色を見せ、かなりなだめかしても、イチゴしか感じられないような弱々しい香りである。ミディアムボディで、油のようになめらかな舌触りがあり、非常にバランスがとれた、持続性のあるワインだが、その味わいは土、砂利、森の下草に支配されている(原文ママ 以下略)。」 <クロ・ド・ラ・ロッシュ VV> 過去に上記の文章を読んだ記憶はあるものの、試飲直前に文章を読み直すことはせず、曰く付のワインというイメージだけを胸に秘めてテイスティングに望んだ。 抜栓後すぐINAOグラスへ。液温19℃。色合いが抜けつつあると表現したくなる赤系ルビー色で、ガーネットはまだ現れていない。個人的に薄い色が好みのため、この色はいい感じである。赤系果実に紅茶や干した芋のような香りが続き、ほどなく砂糖漬けのニュアンスも顔を出してくる。いわゆるモロミ的な熟成香はほとんど感じられず、干し芋だけが妙な感覚だったりする。香り自体はおとなし目で、勢いはないものの、まだ果実香も持ち合わせているので、なんとも微妙な装いである。若さと熟成の両者になじまない中間的な位置づけだろう。口に含めば、収斂性が際立ち、口の中がキュッキュッと締められるような感覚もある。これは強めのアルコール感からくるものだろうか。そして次第にキュキュ感がなくなると、穏やかな味わいになり、丸みを感じるものの、どことなく弱々しさが支配的となる。しばらくワインを口の中に留めておくと、舌の両サイドから唾があふれ出てくるが、同時にタンニンの渋みが気にかかり、辛口の味わいだけが強調されている。グラン・クリュによくみられる甘みにも似たうまみ成分はあまり感じられない。余韻は短く、何か物足りなさを感じざるを得ないところに一抹の寂しさを覚える。 私のメモには、「ムズカシイ、ムズカシイ」が残っていて、「そんなにおいしくない」という拍子抜けのコメントで締めくくられている。うーん。考えさせられるワインである。丸みを帯びたと言えなくもないタンニンがまだまだ熟成を予感させるものの、この弱々しさゆえに熟成を下支えするには少し役不足かもしれない。 <パーカーコメントとの比較> 色合いは照明の加減で変化するのでなんとも言えない。 香りは弱々しさで共通するが、イチゴ以外にもいろいろ感じられた。 味わいは、「油のようになめらかな舌触り」には、なるほどそういう表現もありかと思う。パーカーが言わんとしていることはある程度共感できる。森の下草と干し芋になんとなく共通点を見出せるが、微妙に違うような気もする。 <まとめ> 今回のワインは87 ?の採点通りの味わいがする。通常のグランクリュが三本も買える高値にして、この味はかなり期待を裏切られる。決して傷んだワインではなく、ある程度のうまみ成分によって唾もあふれ出ており、ある程度の水準には達してはいるものの、同時にパーカーの首をかしげる仕草も目に浮かぶというものだ。一年ほど前に同じく87 ?の評価だった95グリオット・シャンベルタンが予想に反してすばらしい味わいだったのに対し、今回のクロ・ド・ラ・ロッシュVVは評価通りのふがいなさに共感したりする。 結局今回のワインについては、パーカーの評価に賛成票を投じることになりそうだ。 ワインはムズカシイ。今回のワインはパーカーの評価に自分なりの考えを持っている人にぜひ試飲してもらいたいところではある。大きく評価を下げたワインというのは、100点評価のワインよりも評価の基準が明確になるような気がしたりもするが、敢えておいしくないよと言われるワインに手を出すのは、それ相応の勇気もいるのが辛いところだ。 註 厳正評価世界のワイン 講談社刊 フランスのワインU P436より引用 (文脈からもわかるとおり、試飲者はパーカー自身ではない) 以上 |