アルノー・アント
試飲日 2003年02月09日
場 所    神奈川県某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方 AOC白ワイン
生産者 Domaine Arnaud ENTE (Meursault)
Vintage 1998
テーマ 禁断の1998
ワイン Meursault
<ムルソー>
 少し冷やして抜栓後すぐINAOグラスへ。液温18℃。透明感のある優しい金色。うっすらとハニー香が感じられ、白い果実を意識させるトロピカルな香りは、俗に言うムルソーのバター香やいぶし香とは縁遠い香り立ちだ。どちらかといえば、シャサーニュ・モンラッシェ的なアロマであろう。口に含めば、十分なとろみ感とともに、丸みを帯びた果実酸の切れがいい。濃縮された味わいは、エキス分を大いに感じ、「濃い」充実した味わいだ。余韻も長めで、この何ともいえない丸い味わいが、飲み手に喜びを与えてくる。うまいね。いいね。今このワインを飲めることが、こんなにも幸せ。

 さて1998年のムルソーは天候に恵まれず、かなり厳しい年となった。詳しくは別コラムに譲るとして、個人的にアントの出来が非常に気になっていた。結論を言えば、アルノー・アントはすばらしいムルソーを造っていたということになるだろう。悪天候にもメゲズに確実なムルソーを造りだしていて、アントのさわやかな笑顔が目に浮かぶ。畑は甚大な被害を受けた斜面側ではなく、国道74号線と市街地の間の平地部分にあり(オルモーの50年古木)、地中深く根を張ったぶどうの木と、グリーンハーベストに頼らない栽培技術の成果が今ここに花開いたことになるだろう。

 ワインに戻ると、それでもやはり酸は弱い。それはムルソーのアペラシオンの特徴にして、悲観すべきではない。まるみを帯びた酸は今が飲み頃を示唆しており、今飲んでこのよころびを大いに共有したいところである。むしろ、巨匠たちが苦戦を強いられた中での成功は、アントをスターダムに押し上げる可能性すら秘めている。逆に気象条件の整った年のアントは、驚異的な味わいをかもし出しそうで、非常に楽しみだったりするが、希少ゆえに出会ったときに値札を見ずに買っておくしかなさそうだ。

 ところでアントの1998ムルソーは一年前にも数回試飲している。その時のコメントと今回の印象は少し違っている。この違いは熟成の結果と抜栓温度の違いによるものと推定されるが、この違いがあるからワインは面白かったりする。


以上

 


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