ルイ・ジャド
試飲日 2003年03月02日
場 所    神奈川県某所m
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方 AOC赤ワイン
生産者 Domaine Louis JADOT (Beaune)
Vintage 1999
テーマ 二つのエシェゾー
ワイン ECHEZEAUX Grand cru Domaine Gagey
ÉCHEZEAUX Grand cru Domaine Louis Jadot
 
<はじめに>
 今回は特別企画。エシェゾーはルイ・ジャド社が所有する唯一のヴォーヌ・ロマネ村のグランクリュであり(註)、そのエシェゾーにも所有形態が異なるワインが存在する。今回の二種類がそれであり、ドメーヌ・ガジェとドメーヌ・ルイ・ジャドの二つのブランドでリリースされている。畑の位置など詳細は不明だが、同じルイ・ジャドでなぜ2ブランドあるのか、その味わいに迫ってみよう。

 試飲にあたり条件をそろえるために、二本同時抜栓して、すぐINAOグラスに注いだ。推定液温18℃。テイスティング終了後はそれぞれの個性をより引き出すために、ガジェはロブマイヤ・ブルゴーニュ赤白(通称ミュジニーグラス)へ、ジャドはバカラ・オノロジーグラス(通称ちびコンティ)に入れて大いに楽しんだりした。今宵の素敵な出会いに感謝である。


<ガジェ版>
 
濃い目の深いルビー色。香りは閉じ気味だが、黒系果実がずしりと香りつつある。口に含めば、滑らかさの中に充実した酒質を感じることが出来、特級エシェゾーを意識させるに余りある。全体的に華やかな印象があり、同じ果実味でも赤系果実の比率の高さが印象的で、そこにエレガントな味わいが重なってくる。余韻も長く、その余韻にも溢れんばかりの赤系果実味が重なり、極めて華やかである。時間とともに華やかさに拍車がかかり、美しく彩られた花束を想像したりする。
 
<ルイ・ジャド版>
 ガジェ版とほとんど同じ色合い。同じく香りは閉じ気味で、黒系を意識させる香り立ちが、液面すれすれのところで留まる印象がある。口に含めば、ずしりと思い重量感。根本的なテイストの部分ではガジェと同じであり、これがエシェゾーのテロワールだと意識させるが、重心を下に配した重みのある質感は、まったく違う造り手のワインの様でもある。強引を承知で例えるならば、DRCのエシェゾーを思い描けなくもなかったりする。時間とともに黒系果実がいよいよあふれ出し、ぐさりと重い質感のイメージとダブるように存在している。時間とともにその重さは上品に、そして確実に質量を増していき、ヘビー級のエシェゾーの堂々たる風格を見せつける。


<まとめ>
 両者に共通するのは、エシェゾーとしてのモチベーションの高さであり、充実した質感にさすがルイ・ジャドのパワーを感じる。ガジェ版は、非常に華やかな印象であり、ミュジニよりのエシェゾーを意識させるのに対し、ジャド版は、ヘビー級のポテンシャルをグイグイ見せつける味わいだ。抜栓直後は、容姿が違う二卵性双生児の印象を受けるが、時間とともにシャムの双子よろしく、どんどん違う方向へと進んでいく。根本的なテロワールはエシェゾーそのものなので、心臓部分は共有するが、それ以外の要素、例えば表現豊かな表情や重みなどは、大きくかけ離れていくところが面白い。用意ドンで、違う方向へ走り出していくようでもある。

 いずれにしても本気になったルイ・ジャドの底力を思い知る。1999というハイ・インパクトなビンテージとルイ・ジャドの豊富な資金力が、フラッグシップのその旗を大きく翻させる。ルイ・ジャド健在。二つの異なるエシェゾーを提供しうる恐るべきパワーにブルゴーニュの大いなる存在感をひしひしと感じるこのごろである。


註 リシュブール ロマネ・サン・ヴィヴァンなどはネゴシアンワイン

以上

 


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