ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドール
試飲日 2003年04月18日
場 所    フランス パリ某所
照 明 自然光
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Domaine de la Pousse d'Or (Volnay)
Vintage 1986
テーマ パリで古酒
ワイン Volnay 1er cru Clos de la Bousse d'Or (monopole)

<ヴォルネイ 1級 クロ・ド・ラ・ブス・ドール>
 
地下のワイン売り場で購入後、すぐ二階のレストランにて大き目のグラスへ。ガーネットの優しい色合いが、パリの光を浴びて輝いている。古酒にありがちなもろみ香や醤油香はなく、つくづく静かに枯れゆく香りを醸しだしている。腐葉土のニュアンスになめし皮、うっすらと紅茶が漂っている。口に含めば、酸味が優先し、やや中身が無いような感覚に陥る。むむむ。香りは悪くないが、味がついてこない。パリといえども古酒は厳しかったかと不安もよぎる。

 しかし、抜栓から少しばかり時間が経過すれば、いわゆる味わいにコクが出てきて、構造的な骨組みも現れてくるから一安心である。ゆっくり喉元に流しこめば、静かにミネラルを感じ、エレガントな味わいが充実してくるではないか。この味わいは古酒ならではの繊細さである。そもそもこのブス・ドールには1級畑の力強さはなく、限りなく村名に近いポテンシャルを反映してか、10余年の時を経て骨組みはいよいよか細く、しかし何とかぎりぎりのラインで持ちこたえている姿がまた美しい。か弱くも、そこに美がある。天才ジェラール・ポテルの力量が彼の死後もこのワインに面影を残す。この感覚もワインの大いなる魅力のひとつ。澱はかなり多いが、グラスに残るそんな澱を見つめる光景は、我ながらちょっと幸せである。

 もう出会うことのないワインかもしれないが、この味わいの記憶はいつまでも心に宿り続けることだろう。
 
 プスドールについてはこちらを参照


以上
 


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