＜はじめに＞
　今回はスペシャル企画として、ブルゴーニュ魂が最も注目するベルナール・デュガ・ピィの特級ワイン3部作の2001年ビンテージを水平テイスティングしようというもの。フランスの評価本「Le Classement　2004」のトップ10ブルゴーニュにおいて、デュガ・ピィのマジ・シャンベルタンはロマネ・コンティを押さえ、堂々の第一位に輝き、シャルム・シャンベルタンも上位にて紹介されている。シャンベルタンがランクインしていないのは、彼らが未試飲のためと想像でき、それは生産量200余本というあまりの少なさに起因するものと思われるが、今宵その真相を神奈川県某所で探ろうという壮大な企画がついに実現したのであった・・・。

＜特級マジ・シャンベルタン＞
　抜栓後30分ほど待ってからデカンタに移し、さらに30分待ってからINAOグラスへ。かなり濃い目のルビー色で、エッジにはムラサキ色もしっかりと確認できる。香りはかなり開いていて、勢いがある。カシス、ブラックベリー、スミレ、バニリンオーク、チョコレート、湿った土壌香に加え、猛然と動物香が香ってくるのだ。複雑で優雅な香りの中には、どうやら麝香(ムスク)もあるようで、この香りは腰で感じ、官能的なニュアンスを助長させるから凄い。口に含めば、滑らかな味わいに強烈なパンチ力が加わった印象で、体がガツンと仰け反る様が驚異的だ。ワインを口に含んだときの衝撃は、過去最高レベルのサプライズであり、至福の瞬間に言葉は出ないのである。

　このマジ・シャンベルタンは、明らかにシャルム・シャンベルタンとの格の差を見せつけ、両者の間には、広くて深い川が3本くらい流れているような感覚に陥らせる。シャルム・シャンベルタンで感じたワインの頂点の上に、さらに頂点があったというような感覚も面白い。男性的なパンチ力があり、奥深い構造がポテンシャルの高さを裏付けているようでもある。果実の自然の甘さが、うまみに重なり、ミネラル感たっぷりの味わいは、うまみ成分が途方もないほど充実していて、余韻というにはあまりにも長すぎる時間を弄んでくれるところも、すばらしいと言わずして、何をや言わんである。

　このマジ・シャンベルタンは男性的で筋肉質な確固たる構造を持ち、それでいて木目が細かく、穏やかで滑らかなタンニンが極めてエレガントであり、舌の両脇を心地よく刺激する果実酸との調和も見事。そしてタンニンと酸と分厚いが滑らかなボディ感(厚み)とのバランス感覚も最高で、これぞブルゴーニュワインNO.1の実力に相応しい味わいである。

　そして三角形の形をしたシャンベルタングラスで頂けば、もう笑いも止まらず、飲むごとに自分がうれしそうに壊れていくのであった。この男っぷりのよさには、ダンディズムを感じ、「マジに旨い」とつまらないオヤジギャクには、誰も耳を傾けようとしないところが、淋しかったりする極上のひと時なのである。

　「男っぷりのよさ」そんなマジ・シャンベルタンなのである。

　今宵の出会いに大感謝である。


　第一弾シャルム・シャンベルタン
　第三弾シャンベルタン

　
以上