デュジャック | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2006年03月25日 | |||||||||||||||||||||||
<1997 二つの特級> ワインセミナーにて。ずいぶん前から立てて保管していただいていたセラーから出し、室温になじませてから、抜栓後すぐロブマイヤー・バレリーナ・グラスVへ、クロ・サン・ドニ、クロ・ド・ラ・ロッシュの順にサービスした。(順番については、特に意図せず、ボトルをつかんだ順にて・・・) 澱もかなりあり、それはINAOグラスで半杯分ほどだった。 両者ともエッジの透明感が広めの薄い色合いにして、往年のデュジャック色といいたくなるような美しさ。香は閉じ気味で、クロ・ド・ラ・ロッシュにいたっては、コルクに由来する黴っぽさが最初に感じられ、それはドキリとブショネを少しばかり連想させたが、程なく消えて、ほっとしつつ、ハーブのニュアンスを持った穏やかな赤系果実の香と共に、アンズ系の優しさに包まれていった。両者共に往年のデュジャック香を持ち、それは余りにも切なく、そして儚かったため、このワインの寿命の短さも悟りそうになるほどだった。オリエンタリックな熟成感を伴った果実香は、ほんのりとした鰹節風味の薫香と、優しいなめし皮のニュアンスに象徴されていた。 抜栓直後の印象としては、クロ・サン・ドニの方が、線が細めの繊細さを特徴とし、クロ・ド・ラ・ロッシュの方が肉厚で、ふっくらとした果実味とやわらかさを兼ね備えていたが、グラスの中で育てるうちに、両者共にぐいぐいと成長し、儚さを常に意識させつつも、リッチな味わいを提供し続けるところが、にくかったりする。 味わいはとてもシルキーで、滑らかな味わい。残念ながら諸般の都合により、ちょっとずつしか試せなかったが、その優しい味わいは、アンリ・ジャイエの味わいに共通項も多く見出しつつ、しかしそれはデュジャック節の世界を堪能させてくれるのだった。余韻は長く、「優しい」でつながるタンニンと酸と果実味と熟成感のはバランス感覚が、不思議なハーモニーを醸し出し、薄い色合いにして豊かなうまみ成分を感じるほどに、ここにピノ・ノワールのひとつの完成形を見るのだった。 クロ・ド・ラ・ロッシュもクロ・サン・ドニも、こうして比較するなら両者の違いも認識しつつ、しかしかなりの要素を共有するので、別々に楽しむならば、デュジャック節の優しさを、共に感じることができると思われ、斜面の個性よりも、造り手やビンテージの個性が優先しているように思われた。 儚くも、グラスの中での耐久性を持った二つの特級ワイン。できることなら今一度、デュジャック節を象徴する1997年ビンテージに出会いたいと思う。しかしすでに入手は極めて困難で、このワインを購入した某店のセラーに眠る最後のクロ・サン・ドニが売られていない事を祈るばかりである。 おしまい | |||||||||||||||||||||||